表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
床下の迷宮  作者: へますぽん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

82/92

第88回遠征団発足

 あぁ、最初に言っておくけれど、87回遠征したかどうかは不明。なんとなくノリで数字を言ったら採用。末広がりで縁起か良いのよ。初回じゃないしお祖父さんや叔父さん達が出たらしいのも聞いているそうだ。戦績も。

「それでも、男たるもの旅に出るのだよ」

 ほうほう。春のネコチャンの心情をチンチラから聞かされている気分だよ。

「若雄は群れから出されるからねぇ。ライオンとかたいへんらしいよ?エサが取れないとか縄張りを侵害したとかで他の群れの雄に負けてだいたい死んじゃうんだって」

 不吉な発言にドン引きするチンチラ達の視線にわたしは挫けない。なんならここで首にしてくれないかな。

 当地のチンチラの群れはそこまで厳しくない。というかこの迷宮を維持するために外には出されない。ただ、伴侶はなかなか若雄には得られない。そのためにときどきこうして遠征をして新たな出会いを求めるのだ。

「今回の遠征は従来通り新しい通路を作りながら進む。ミズキが着いてくるから牧草の運搬が可能になったので効率よく距離が伸ばせることを嬉しく思う」

 そう言ってもっちりと背を反らすシルバーのチンチラ。遠征団のリーダーに就任したようだ。メンバーはキャラメルポップコーン君を含む十数頭の若雄。春先の名物らしくこの間の迷宮は兄貴分達でまかなう。叔父さんやおじいちゃん達も動員されるが、自分たちも通った道なので今度こそ悲願達成だ!と応援されている。今度こそ。っていう時点で既にアレだとは思わないのか?懲りないのか?


 このもっふもっふの不毛な団体は意気軒昂である。

 小学生の遠足のバスのテンションで考えて欲しい。ものすごい高音(ときどき聞き取れない)で口々に叫びながら集団で居住区のハズレに向かう。

「もしもこれから向かう先で侵略者に遭遇して、我々の辿った道から巣穴を襲われると主様と群れが危険だからな」

 わたしは男児の群れの後ろから続く。背にごっそり干し草と砂の入った袋を負い、腕に一頭チンチラを抱えて視界を照らしてもらっている。話し相手で解説担当だ。足元はデコボコしていて歩きにくい。あまり往来がないらしく処理が雑なのだ。


「オレがいっちばーんっ!!!」

 暗がりで黒チンチラが叫ぶ。視界にはボンヤリした影にしか見えなかったので唐突に叫ばれてびくっっと身体を振るわせる。腕の中のチンチラがもぞもぞと位置を直す。

「黙れよ。おまえじゃないだろ」

 シルバーに促されてきなこ色のチンチラがヒゲを全開に広げてふるふるしながらあたりを探る。

 それから真上に孔が開いた。

 きなこはチンチラが通れるちょうどの大きさの穴へひょういと飛び上がってするすると上に進んでいった。腕の中のスタンダード毛色、桃色がかったグレーのチンチラに尋ねると

「これから進む方向の選定と試掘をするんだよ」

 きなこが地表に出て目的地の目印を認めて降りてくる。

「俺たちは西の山脈の向こうを目指す。山をくぐった先にある運命と出会うんだ」


 うん。山を目印にすればわかりやすいよね。

 初期はただ地下をゴリゴリ掘り進んでいたせいで方向もなく気がつけばだいぶ曲がってしまい思うほど遠くに行けなかったというか迷宮の環状線みたいになってたいらしい。ここも環状線の端っこだって

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ