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床下の迷宮  作者: へますぽん


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落ち武者

 チンチラはストレスなどでも脱毛するので、あのあと悄然とした男児(薹立ち)が浮いた毛をボサボサさせていた。それを一頭ずつ漉いて毛を回収。

 膝の上に乗せて、口の中でもそもそと呟く言い訳とかわざとじゃないとかちょっと悪かったかもしれないなどの繰り言をふんふんと聞き流しながらバサバサと抜けてくる毛を梳き取る。もう一頭同じチンチラが出現しそうなくらいの嵩高さだ。漉き終わったら、もうやめてよね。といって放免する。

冬だというのに落ち武者のようにジャリっぱげもあるみすぼらしい後ろ姿で今年はちょっとモテそうもない男っぷりである。

 猛禽防護網制作は断念して自分の防寒用にルームソックスやらネックウォーマーなども追加で得た毛を紡いでは編み足してゆく。

 黒は少ないので縁などアクセントに入れるようにしてベージュや灰色のグラデーションで全身を覆う。わたしも、もうすっかりチンチラカラー。群れに混じって違和感がないだろう。

 べつに急いで編まなくても地下はそれなりに暖かい。凍えないくらいに。

 なので春になる前に編み上がれば良いくらいにゆっくりと編み針を動かしている。

 食べるものもあるからね。のんびりだよ。

 牛丼(ビーフボール)おにぎり(ライスボール)ばっかりって思うとアレだけど、わたしは独りの食事だと雑な献立になりがちなので平気。

 献立考えて、買出しに行って調理。毎日。たかがそれなんだけど、追い詰められる日もあるんよ。

 その点チンチラはずっと牧草。若干品種があるけど、ゆうて牧草。単調さでいえば勝ったな!

 うむ。


 寝言のような与太を語っている。

「イヤ、どうなんだろう」

 そう応えるキャラメルポップコーンくんはあのときたまたまわたしと移動していたので騒動に巻き込まれていない。そのため被毛は溶けたキャラメルのように艶やかでうつくしい光沢、若さと自信でまさに輝くようだ。青年部イチの毛並みといってもいい。

 豪天号は冬も熱く愛を語りかけているらしい。っていうかくっつく口実が出来てこれ幸いと若紫ちゃんにまとわりついているようだ。順調でなにより。

 という話を彼は聞かせてくれる。もうすぐ春仔がおなかに宿る季節がくる。男っぷりをアピールするべき大事な時期である。

「ぶっちぎりで好感を稼いでいるんだろう?やっかまれて後ろから蹴りをいれられてる?」


「は?歯牙にもかけられないし。まとめて却下されてるし」

 豪天号がそうであったように、モテ雄は上位に集中してて若手の注目株くらいでは相手にされないらしい。だからこそ豪天号のにわかハーレム(予定)は画期的だと青年部男児の熱い視線を集めている。

「だから、旅に出たいんだ」


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