表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
床下の迷宮  作者: へますぽん


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

72/92

アミ

 気温が順調に下がり始めたので蔓を綯う作業は春先まで先送りすることにした。

出来た縄を一部試験的に網目状に結び合わせてみる。網目からはチンチラが連れ出せないサイズに調節して、その規格にあう定規代わりに割り箸を折る。割り箸の長さに合わせて2本のヒモを結び合わせるのだ。

 もちろん網で覆っても殺戮者が防げるわけじゃない。飛来するサギが屋上庭園の鯉を根絶やしにしたのだと行きつけの歯医者さんが泣いてた。網で池を覆っていてもその嘴でずぶりと刺す。持ち帰れなくて哀れな犠牲を落として帰る。ヤツは懲りずに来る。また犠牲が出る。都内のサギって珍しいと思うけど頻繁に現れては最終的に全ての鯉を屠ったらしい。

 だから、きっとこの網で解決しきれない。でも抑止になるのではないかと期待しているのだ。

 試作と縄は壁際に下げておく。踏まれたくないからね。するとキャアキャアと若チンチラ団が襲来する。豪天号よりも若い世代だ。青年部若手。でもチンチラなので好奇心が強いし、遊ぶ機会は逃さないマンだ。

 ひょいと飛び上がって網を器用に登る。小学校の体育館にあった網登りをしている子の様だがこの網目は大きくてかなり登り難いはずなんだけど、ものともせず次々に集ってくる。

 やめてほしい。強度に自信がない。防御網として活用する前にちぎれていそう。

 ぶんぶんと身体ごと網を揺すって仲間たちが一斉にウヒャウヒャと奇声をあげてはしゃいでいる様子があまりにも愛らしいので咎めることが出来ない。


 半ば黙認している状態で、わたしは自作のスピンドルを回す。

 スピンドル、糸を紡ぐ道具といえば上等なんだけど、大ぶりのドングリに割り箸をぶっさした極めて原始的な代物だ。割り箸大活躍。ほんとうにビーフボゥルはお役立ち。

 独楽スピンドルが大きい方が捗るけれど繊維を引く力が強いので、短い繊維を紡ぐ都合上、小さい独楽でチマチマ紡ぐ。作業時間はあるのだし、寒くなる前に編み上がればいいのだから大丈夫だろう。

 ドングリ独楽でやたらネップのある糸を各色紡いで、双糸に撚ってからカセにする。

 このところ一日中座り込んで黙々とドングリ独楽を回し続ける奇行にチンチラたちはドン引きだ。

 わたしが作業している場所は以前から明るい地表に近い部分で居住スペースからちょっと離れている。わざわざ入れかわり立ちかわり様子見に来てくれている。ついでにアスレチックで遊んでいる。違う、それは運動具じゃない。


 なお、そのメンバーには豪天号たちは含まれていない。豪天号の用があるときは訪ねてくるよう伝言してわたしが足を運ぶのだ。一時たりとも若紫ちゃんの成長から目を離したくないらしいよ?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ