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床下の迷宮  作者: へますぽん


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サービスディ

---- 本日サービスディforシルバー ----

 大きな葉っぱに尖った石で書いたビラを掲げる。


 今日はスタンダードグレーとかサファイヤのような灰色系のチンチラに『奉仕』するよという意図である。わたしはその為(毛が舞う)に張り切って対策。髪も耳もしっかり覆う姉さんかぶりして、マスクも装着。両手にそれぞれ櫛をもつ。

 干し草を包んだクロスの上に最初の客サファイヤを案内して、伏せるよう声をかける。

「背中から櫛を入れてゆきますよ」


そう、毛づくろい屋さんを開催中。

当初そんな怪しいものに、さすがのチンチラたちも困惑して遠巻きにしていたんだけど

ぷぐぷぐとあられもない声をあげて気持ちよがる轟天号の様子に好奇心が抑えきれない仲間から順に身を投じてきたのだ。

お湯に入ると、うぇーとかあ"ぁーとか変な声出るし

ツボを押されると、んぁぁっとか、んふぅっ!とか怪しい声がどうしてもれちゃうんだろうね?

わたしは櫛を入れやすい背中のケアからが良いんだけど、寝そべっている対象たちはマズルとか喉とかデコルテをグイグイ櫛にあわせてくる。そして鼻息なのか、つい声があがっちゃうのかグィッっとかぷぅとかけっこうヤバい風情になってて誤解を招きそう。

ブラッシング嫌いな子もいるらしいけど、ネコや馬、他の家畜もシモベに奉仕させてるよね。

ただし、これは下僕行為じゃないから。


冬用の防寒着を作る為の採取している。採取するときに色を分けることで紡いだ糸を染めなくても模様編みが可能になる。

羊はバリカンで豪快に剥いているから、櫛で採取するのはどうかと思うけど、カシミヤ山羊も春先ブラシでガバリと掻きとっていた。

そう。春先。

要らなくなった冬毛をごっそり。

今は秋なのでこれから必要な冬毛を掠めることになるわけだ。あるいは夏毛の回収?


ともあれ常時毛は抜けるのだ。通年、抜け毛は発生してるし全身毛まみれだからその量は充分。まして群れの抜け毛が全部わたしのものだ。毛布だって可能だろう。

希少なチンチラで作るニット。なんて贅沢。ほほほほ。


本当のことを言えば、難易度は高い。毛が短く繊細。道具も貧弱。

編み針なんてビーフボールに付属してる箸を削って自作したものだ。編み図もないからボートネックのベストを予定。秋の始まりってニット欲が高まるよね。春までに袖が付かないのが例年のお約束で編みかけが押し入れにどんどん溜まって行くのはあるあるだ。凝り性の飽き性。

だからこそのベスト。後身ごろから編み始めて飽きる前に前見ごろまで完成させるのが秘訣。そして肘までの丈のケープが有れば冬もぬくぬくだ。毛布をかぶって暮らすのは難しいからね。

ケープはグルグル編み進めれば良いから挫折し難いと願っている。いや、寒さが手を止めさせないだろう。本当にニットってハラハラするよね。手袋片っぽでもう指編むの飽きたとか、靴下の踵が上手くいかなくて放置とかしてると春が来てしまう。二度と開けることのない段箱に収納されて押し入れへ。なんて危険。



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