将来についての願望を
ゆくゆくは本命通路の入口周辺を崩落させて、侵入者をお断りしたい。わたしがいる間はお供え物に不自由させないから、これ以上贄を必要としない。侵入者を迎え撃つチンチラが怪我をしたり命を落としたりすることがないように。
草刈りもチンチラが食べる分くらいならわたしがまかなえる。
みんなでこの洞穴に籠城すれば良いと思う。十分な広さがある。
クレーター風の牧草栽培スペースの隅に林から搬入した腐葉土や使用済み浴用砂、主様返却干し草などを積んで春まで堆肥になるよう支度する。ほんとうにいい土を作るならもっと時間がかかるけれどそれはおいおいかな。
当座の栽培用には、林の表土がハゲないように彼方此方めぐってちまちまと袋に詰めては搬入する。ミミズは見つけたら絶対回収して堆肥の生成に協力してもらう。
「こうしてささやかながら住処を充実させているとスローライフ感があるわね。将来的には豪天号とその子供達の系譜を作って血統の管理などをすると、シワのある豆と丸い豆から遺伝の法則を発見する修道僧の心地に達するかもしれないし」
野心を語ってみる。
「決闘?」
「違うって。血統。若紫ちゃんたちは豪天号とは違う群れからきたでしょう?在来種との交雑を放置するのはマズいんじゃないかと思うのよ。元の形質を失ってしまうから。今は外来種はもちろんよその地域の生き物の放流とか人の手で改良した生き物を野に放つのは叱られるのよ」
「ほう。ミズキの郷はむずかしいことをいう。でも、既に何度もよそから来たものを何代も前から群れに迎えていて、それがいつからどうなっているか全くわからんぞ?」
…だよねぇ。このチンチラ離れした大きさ。そもそもあの美しいコラーラスってチンチラのすることじゃない。どこからどうやって得たものやら。ああ、そういえば、話すし。
「だって、系譜作るの面白そうだったんだもん。相関図とか好きなの。んんー。でも配偶者が7頭だと書きにくそう?クフ王の系譜よりもつれるね」
例えば、若紫の娘の仔(ようするに豪天号の孫)と7人目の奥さんの妹の仔(孫から見ていとこ)が子をなすときの系譜上の配置を考えると頭の中がこんがらがるね。
源氏物語も後半、名目上の息子と妻の不倫編では、だからおまえら誰やねん。ってなった。なにしろ、しょっちゅう名前が変わる。それはキャラ名が役職だから。しかも妻が多くてこの息子の母が誰でどの男が密通したのかも混乱してゆく。っていうので挫けたな。
それと紫ちゃんが無理強いされた上に、しれっと「おめでたいことなのに泣くのはおかしい」と責められるのもいやだった。でも、それが時代と価値観の違いだ。良いも悪いもない。
っていうか、あれがなでぽも同然なのだろう。後世において壁ドンもこのように言われるの?
でもね。豪天号の若紫ちゃんには健やかに長生きして欲しいので繁殖は身体の成長を優先して欲しい。




