おのろけですか
ごぶさたしています。
再開します
「ミズキ…」
豪天号がヒゲを萎れさせて現われる。
わたしのかたわらに蹲り、ときおり鼻面をひくひくさせて何か言いかけるがまた黙り込む。
わたしは床に座ったまま、手はずっと蔓を裂いて表皮の繊維を集めている。
草のアクで爪は真っ黒だし、蔓を集めたときについた細かい傷でささくれた手のひらも黒く薄汚れているしなんか草の汁の臭いもついているからもはやどうでもいい。
いつまででも言葉になるまで黙っていていいのだ。
わたしは手仕事中なので豪天号がそばにいるだけで可愛い。
最近はめっきり寄りつかないからな。
サファイヤもシナモンもパイドもみんな!!!
光の充分届く居室を帰還後設けさせてそこで冬に向かって蓄えた草や蔓で作業している。
室温も安定してるし、刈草もずいぶんがんばらされたおかげで充分に蓄えられている。
ここのチンチラどもは実にしもべ使いが荒い。
わたしの冬支度を見て、我も我もと濡れた眼で見つめつつ尻尾を震わせて表情を作るのだ。
ぼんやりと可愛いあんちくしょうどもめと意識を飛ばしながら指先を見つめていると
「おれはまた旅に出るべきかと」
豪天号が辛そうにつぶやく。
「冬は無謀じゃない?」
以前、死にかけたっていったじゃない。
「もうすこししたら、妻の最初の発情期が来る。だけども身体ができあがっていない状態なので長生きさせたいならその次からの妊娠って山吹の女房たちはいう。でもその瞬間がきたらおれはぜったい誘惑に勝てない」
そばにいたら彼女の誘いは断らない。その結果彼女の成長や健康を害してしまうことが恐ろしい。距離を取れば良いと思った。
それで旅に出ようというのだ。
「でも留守中彼女に言い寄るものが現れるに違いない。美しく可憐な繁殖期のメスだ」
連れていくのも危険すぎる。
どうしよう。妻が可愛すぎて不安が募る。
切なく訴えているが、豪天号よ。それはただの惚気だ。
「わたし、それの対策知ってるわ。昔から美しいお姫さまは塔の上に匿われるのよ」




