ハーレムなのか 続き
前回途中で断ち切れて すみません。
書いてる最中に背後やら膝のうえに
ねぇねぇ。なにしてるの?ねぇ?
大騒ぎしながら尻尾があったりなかったりする家人がねばっていて
どうしても衆人環視の中で記述できませんでした。意気地無しです。
朱い棒でかこまれた祭壇の手前、棒の外に豪天号と相対している小さな齧歯類の一群がいた。
あきらかに竦んでいる。
当然だ。
見知らぬ群れのなかに唐突に放りこまれたのだ。
恐怖で臭い腺が大暴れしたって不思議はない。スカンクじゃなくてよかったな!
なにより大きさが違う。
豪天号はちょっとしたオス猫ほどある、チンチラにあるまじき巨大さだ。
わたしもなぜビスカチャとかカピバラだとおもわなかったんだろう。
そして竦んでいる小さいほうはそれぞれモルモットほどしかない。
嫁さんにはならないのでは?
っていうか、薄暗がりで鮮明に見えないせいかもしれないけど
体色が、
毛皮の色がちょっと齧歯類とは思えない。
コザクラインコとかアオバトとかルリコンゴウインコを想像して欲しい。
きわめて華やかな色とりどりの被毛に包まれている。
サファイヤとかシナモンとかライラックと呼ばれていた従来の毛色が
中華料理の献立名のように盛っていたと言われかねない発色の良さだ。
あと、チンチラのチャームポイントである耳、大きくて団扇型の愛らしい耳が、違う。
ヘルメスのヘルメットのようにみえる。翼の形。
ダンボか?それで飛ぶのか?
期待を込めて見ているが、小さい齧歯類たちはみっちり団子になってくっついたまま膠着状態を続けており、どうやら飛翔する様子はない。
「あの新しく来た一群は、チンチラ?」
おもわず山吹に問う。
「もちろん。あるじさまが御遣わしくださったのだから、およめさんですよ。でもちょっと若いかもしれません」
「あぁ。若紫か」
齧歯類は成長が早いから、すこし早めにきてこっちの群れに馴染んでから豪天号の嫁さんになるのか。半年で成獣だからね。
見つめ合う豪天号とお嫁さん群。
被毛を逆立てお互いにくっついていた小さい極彩色たちに
「やぁ!ようこそ。歓迎するよ」
イケメンな声かけをしてゆくパイド。それに続くサファイヤやシナモン。
「こわくないよ。だいじょうぶ。すごく香りのいい干し草を用意しているんだ。おいで」
「とくべつサラサラの砂もみつけたんだよ?」
それから高くて可愛らしい呼び鳴きなどをしてそぅっとそぅっと接近して
次々に1頭づつ咥え去る。すごい速さでそれぞれ蜘蛛の子をちらすように走り去る。
「おいっ!待てっ!こら。俺のお嫁さんっっ!」
「一番きれいな子がいるだろっ!」
ライラックがそう言い捨てて最後の1頭をのこして逃げてゆく。もちろん小さな派手色チンチラ風を咥えているので捨て台詞のあとは無言で全力疾走だ。
「……。お嫁さん7頭もいたのに。俺のハーレム。。。」
囲い込みに失敗した豪天号はひどい喪失感で耳もヒゲもぺしゃんこだ。
シワシワにしょげた彼のもとに美しい藤色の幼獣が全開にしたヒゲを前にむけて身体を低くしながらそろりそろりと寄ってゆく。鼻をそっと寄せて臭いを確かめている。
「ねえ?あれは、いいかんじなの?」
「好奇心がつよいんでしょうね。まだちびっこですから」
……。そうか。
がんばれ。光の君。




