ひどいはなし6
「召喚陣?」
怪訝な声をあげるチンチラたち。
話すことも苦しい。考えもまとまらない。
「んぅ。そ。れ。。。王都で買っ…た。『サルでもできる初級召喚術』贄を捧げて簡単召喚。誰でも描ける召喚陣テンプレート付」
あぁ。なんか嘔吐感つよい。頭痛い。震えがとまらない。
「なんだその事故しか発生しない危険な本。発禁か焚書だろ」
「ミズキ。召喚術の心得あるのか?」
「ぅぅんぁ?国会に証人を呼ぶ機会なんてわたしにあるわけ無い」
なんだよ。こっかい?ミズキなんの話だよ?
チンチラたちがぶぅぶぅ言っている。みっちりとわたしにくっついている。
でも、冷えた身体を温めるほどではなく生温かい。転がっている地面にどんどん体温が奪われている。
受け答えがチグハグらしい。
譫言に近い応答になっている。
お供え物と呪文で召喚陣から豪天号の伴侶を招く。
たぶん、いままでに主様は、やり過ぎたのだ。
チンチラの繁殖地が軒並みダメになった原因の1つは主様だと思ったのさ。
せがまれてこの迷宮を繁殖地に接続したはずだ。
そのとき現地では、叔父の小屋周辺のような災害が発生しただろう。
巣穴ごとダメになったかもしれない。
順番にめぼしい繁殖地に大地震が来たせいで絶滅寸前になっているのだと考えた。
では、豪天号はもう伴侶に巡り会えないかといえば、定番の『召喚』に思い至ったわけだ。
行くのではなく、呼び込む。
そのためのお酒でありテキストだ。
主様の力を持ってすれば、たぶん召喚することもできる。
たぶん?
っていうか、血とか生け贄とかよくわからないんだよねぇ。。。。
流れでそう思いついただけで。
素養が無い。
それでも。
主様のところでやったら、どうにかなるかと思ってさ。
美味しそうなお酒を買った。
ミサで使うのもパンとブドウ酒。
大蛇の退治もお酒。
だから、いま、チンチラたちがそのお酒を祭壇の下に供えて
「どうぞ壊れちゃったミズキを直してください」
ってされちゃうと、豪天号の伴侶が得られないじゃないか。
うぅ。




