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床下の迷宮  作者: へますぽん


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ひどいはなし5

王都から馬車を乗り継ぎ最寄りの村までもどってきたが

巣穴に戻るところをみられないよう道からはずれ藪を漕いでこっそり帰還した瑞希と豪天号。

しかし、ヨソモノが大荷物で村に立ち寄るのは迷宮攻略以外無いので、先回りした賊が入口で待ち伏せいていた。

罠に掛かった隙をついてボコボコに暴行を加えられて動けなくなったところで荷物も貢ぎ物も衣類も一切合切、身ぐるみ剥がれる瑞希。

その身は肉壁として迷宮攻略に使われることになり、乱暴な扱いをうけながら主様の祭壇手前まで賊と共に本命通路を進んだ。

祭壇の手前にひろがる水たまりのトラップで瑞希は賊から切り離される。チンチラの誘導で本命通路から離脱しようというところまでが前回までのあらすじ。

痛みで震えているのか。

恐怖で震えているのか。

凍えているのか。

頭も腹も体表のいたるところにある擦り傷と打撲も一斉にアラートを上げている。

賊から逃れたとたんにいきなり痛みが激しくなった。

痛みで蹲って丸まってもおさまるわけもなく、だからといって立つことも座ることも転がることもできない。

鼻水と脂汗と涙がだらだらと垂れてくるまま、呻く。

サファイヤかシナモンだろう声がして、薄くて温かい舌で涙をなめながら宥めてくる。

「だいじょうぶ。もう少しだ。主様にお頼み申し上げるのだ」

「辛抱できるか?おまえが言ったのだろう?死ぬこと以外はかすり傷だ」

かすり傷にしては、命の危機を覚えるけれど、そもそもわたしは大けがを負ったことがないから

大げさに思うのか?


池から這うように、チンチラの小さなさえずりに誘導されて管理通路の中に逃げ込んだ。

「ほら、見えるだろ。おまえの持って帰ってきた酒樽を主様のところにいま持ってきている」

ごろんごろんと数匹掛かりで樽が祭壇横へ移動しているのを岩陰から首をのばしてのぞく。

ほんとうは頭をもたげるのも辛い。


がくがくと震えが止まらない濡れて冷えた身体にチンチラたちが柔らかく温かい毛に包まれた身を寄せてくれる。傷をあたたかい舌でそっとなめてくれる。


「でも。あのお土産のお酒は。。。豪天号の為に召喚陣に捧げるものなのに。あれがなくちゃわたし達まったく空手でかえったことになるわ」

ほぼ上の空でも、それだけはこの旅の眼目だから。そのことだけは譲れない。

あけましておめでとうございます♪

今年もぼちぼちとすすめてゆきます。どうぞよろしくお願いします。

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