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床下の迷宮  作者: へますぽん


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ひどいはなし4

不本意ながらまだ暴力が残っていました。

あらすじは来週の前書きに掲載する予定

暗がりのむこう。ふいに坑道の先がひらけ、天井が高く講堂よりもおおきな空間が現れる。

手前のいくつもの大きな水たまりの向こうに赤くボンヤリと見える灯り。

鳥居のように朱い。何本も棒が連なって垣のように囲っている。

足元の水面に灯りが映っていよいよ妖しさが増す。

灯りは祭壇を照らしている。

主様に捧げる供物を供える祭壇。


朱い灯りはちっとも手元を照らさない。

明るくない。光があるのに鮮明には見えない。

不可解な、不安を募らせる、あの怪しい雰囲気。


水たまりに足を入れるのも恐ろしくつい竦んでいると後ろから短刀が当たる。

刃先が鈍いからあまり切れない。でも、もう少し力をいれて押し込めば死んじゃうんだろう。


「ミズキ、三歩先の深みに沈んで」

どこにあるのか管理通路のチンチラナビゲーションが小さくさえずる。

三歩って誰の歩幅?チンチラの三歩?

深みって?

体温を奪う水の冷たさに震えているのか、背後の賊に震えているのか。

裸足の足をいやいや水たまりに浸し、祭壇に向かって歩を進める。

水たまりというより池じゃないか?たちまち脛より深くなってゆくのをおそるおそる足先で探りながら前に行こうとするが

焦れた賊が刃先に力をかけてくる。


ずぶんっ!


唐突に足先が支えを失い倒れるように水に沈む。

さきにナビから声をかけられていても恐慌状態になりそうだ。

ケーブダイビングは上級者向けライセンスだろう?

ハマったまま身体の幅ほどの溝のなかを沈んだまま息の続くだけ前に進む。

わたしの息が持つのは数十mほどだ。


極力音を立てないように、上がった息を殺すように、賊の気を引かずにすむように。

そうっと水面に鼻だけ出す。まぶたに乗った水が冷たい。


目的の祭壇の手前で肉壁が消費されただけなので

賊はわざわざ暗がりの池のトラップに散ったわたしを探さない。

祭壇はもう視界に入っている。

同じ罠に掛からないように、他の罠にも注意して、みごとお宝を得るのだ。

ブーツの丈よりも深い水をものともせず、ごばりごばりと大きな水音をたてて進んでゆく。


ときどき革ソールが滑ってるらしく大きな転ける水音と悪罵が聞こえる。


充分離れた頃、チンチラナビが誘導してくる。

「いつまでも水の中にいると囓られるからこっちへ」


そうだよね。水だけってことはないよね。

できるだけ音をたてないように、注意をひかないように、祭壇を横目にヌルヌルと声のほうに這ってゆく。



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