帰るまでが遠足
「くーもつっ!供物っ!くーもーつぅぅぅぅー」
作詞作曲わたし。『供物の歌』を歌いながら朝露を蹴散らし帰還する。
王都では貴重な魔法の本も買ったし、お供物も見繕った。
遠回りになるけど、護衛もついて安心な乗合馬車を乗り継いで迷宮の最寄りの村まで帰った。
帰るまでが遠足だけど、道中の犯罪者遭遇率に比べてどれほど安心安全だったか。
女の一人旅はほんとうにヤバい。
車中のナンパなどものの数に入らないし、フードの中の顔がアイブラックとプラムカラーのリップ、白浮きしたおしろいのせいで灰色っぽく土気色の肌が異様で大抵ドン引きで怯えて近寄らない。明るすぎるファンデ つ よ いw
わたしも町中で戦化粧した戦士がいたら絶対最寄りの角を折れて退避するし。
そのおかげをもって、手荷物が多いは、腹に収納した相棒がいるはで席が窮屈になりそうなのに
モーセのまえにあった海のように周りがさぁぁぁっと引いてゆくのだ。
ぽつんだ。
三枚のお札は全部切らなくても帰れそうじゃん。
夕べは村に宿泊して、朝はぎりぎりまでゴロゴロした。
だって主様のご加護があれば巣穴には昼前に着く。
お供物は酒。小振りの樽を小脇に抱え、
腹に一物、両手に荷物。歌いながら暢気に藪を漕いでいた。
さすがに迷宮に帰省する風で帰るのはマズいかと思って途中から山の中に紛れたのだ。
「瑞希。そのマヌケな歌やめろ。声がひびいてる」
豪天号の声が低い。
あれほど危険を冒して遠出したのに、彼はほぼ手ぶらで帰ることになった。
「あら。ごめんなさいね。もうじき着くと思うとついはしゃいでしまって」
着くと思うと、気持ちが沈む相棒を慮る余裕はない。
この地において、あの巣穴だけが心のよりどころだ。
「でもね。だいじょうぶ。
着いたら主様にこのご酒を差し上げて豪天号の伴侶の召喚をしてもらいましょう?
わたし、ちゃんと王都で召喚陣の本も買ったわよ。
『サルでもできる初級召喚術』ってよく売れた本らしいのよ?」
「なんだよ。その怪しすぎて釣りの返ってきそうなろくでもないタイトル。
ぜったいダメなやつじゃん!!」
こちらが探し歩いても得られないなら
定番の『召喚』があるじゃないかと閃いたのだ。わたし天才じゃない?
っていうか、魔法があるんだからまずその可能性を探るべきだったよね。
おひさしぶりです。
お元気でお過ごしですか?
わたしはずっと倒れていました。
まさか晩秋に脱水症状だなんて。
身体が凍えているのに汗が引かず、目線をずらすだけで天井が回り始め
ビックリハウスか春の東シナ海航行かぐるぐると浮遊感で振りまわされる。
autoと目眩で起き上がれないけれど、救急車はきっと忙しかろう。こんなしょうもない症状で呼ぶなんて申し訳ないじゃないか。
1-2日で良くなるらしいと聞いて差し入れの経口補水液とスポドリで過ごしてみたけど
点滴うってもらえばよかったな。っていうのが感想です。
ちょっと萎びちゃった。




