三枚のお札 1枚目
腰の袋。
桃太郎ならもっと気の利いた吉備団子を装備しているけれど
わたしの腰のものには泥団子(テツ光沢なし)が入っている。
件の入り口前で作った団子。
ビー玉ほどの枯れ草混じりなので、不耕栽培の種団子でも始めたいのかと作りながら思った。
それから巣穴前でチンチラの臭い付きなので、伴侶にアピールする為かとも考えた。
穴の中はあまり団子向きの土じゃなかったから、最寄りのここの土採用。
ほら、ネコとかイヌとか新しい家に行くとき、自分の臭いがあると移行しやすいっていうから
その為の用意だと。
まさかの主臭。
しかも今、後ろから聞こえているのはカチャカチャ爪が地面に当たる音。
爪出して走る複数の獣の気配。
聞こえてる時点でもうダメだろ。
『3枚のお札』に出てくる小僧のように泣きそうだし、ヤケクソで、振り返りもせずに走りながら投げる。
どこに飛んでいくか分かんないけど
幾つかは足元に転がった。
残った団子が固く握った手の中で崩れた。
「ムリ。これ以上こんな旅、ムリっ!!」
走るのが速くなっても獣と駆けっこして勝てるはずないじゃない。
泣きながら加速する。
足がもつれて転ぶのが怖い。
転んだら轟天号潰しちゃうし。
息を切らしてるのに、唸りながら走るという意外な器用さで走る。
野良犬だかオバケだか分からない爪を出して走るケモノは主様の御威光に屈したようだ。
キレっぱなしで走っていると
「ミズキ、大丈夫か?もういいぞ」
と相棒の声がかかった。
駅伝走者になれそうなくらいで走った気分だ。
ウソ。
たぶんバス停2個分くらいだろう。
「もうイヤ。これ以上この街道の先には進まない」
アテもなく道の先に進むオスネコのような探索は止める。
キレ始めるわたしに轟天号が鼻白む。
「主様のところにもう帰るのか」
見栄を張らずにわたしの地区のホームセンターでチンチラをカネに明かして求めれば良かったのだ。
だって、よその地域のチンチラは轟天号たちと違って話したりしない
普通の獣なんだって言っていたじゃないか。
もちろんあの時点で市街地やホームセンターの行くためのアシがなかった。
加えて、ペットショップの休業も考えられた。
生体が手に入っても、ケージやオモチャ、チモシー、おやつ、ペットシーツなどが欠品してたかもしれない。
あぁ、室内に監禁しないからグッズは要らないのか。
「無理にでも生体を取得すればよかった」
屋根裏の漏水、いよいよ佳境に向かっています。
補修のため荷造りして出ていくのかしら?
大事らしい




