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床下の迷宮  作者: へますぽん


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候補地1

今度は目立たないように周りの人の速さに合わせて歩いた。

追い抜く時もゆっくり抜いて充分離れてからペースを戻した。


なんといっても急ぐ旅ではない、わたしはね。

腹で涼んでいる相棒は気もそぞろで、

早く繁殖地につかないか、とか、揺れるだのじっとしすぎて怠いだのプギュプギュ鼻を鳴らしている。

じゃぁ前回みたいに自身で進めよ。って声をかけると

蛇だの猛禽だの肉食獣だの常に捕食されかけるので、イヤだと拒む。

なら、帰ろう?と訊ねると

一度でいいから伴侶が欲しいとプギャプギャとぐずる。


二人旅の膠着した煩わしい感じをまさかチンチラとで覚えるとか予想外だ。


街道から分岐して山へ向かう道を進むと

山裾の木立まではサクサクとたどり着いた。

山で柴を拾ったり山菜を得ているのだろう。


獣道か人道かは相棒の嗅ぎわけで判断する。

「どちらでも獣は通るけど、人間の臭いがする方が人道」

それを通って中腹まで通り抜ける。


勾配はさほどでもないが岩が露出して、草は僅かにしか生えていない。

「わりと荒涼とした景色だねぇ」

「高温多湿じゃないと草は繁茂しないよ。そういう土地におれの伴侶は住まない」

被毛密度みっちりでふわふわだもんね。冷涼地向けの装備だ。

岩の間に蛇や蠍などいないか確かめてから、轟天号を下ろす。

「じゃ、婚活頑張ってね」

「待て。こら。危ないって。放置するな。安全確認するまで見張れ」

見通しが良く小型肉食獣とか空からの猛禽とか狙い放題らしい。


歩き疲れているし、風は爽やかだから捜索している間、昼寝したかった。


人使いの荒いチンチラはそれを許さず、結局、私の腹から捜索をすることにしたのだ。

「瑞希だと蛇も逃げるし、移動速度早いから捜索範囲広がるし」

なんかほんと馬のような扱いされている。


ところどころで降りて匂いを確認していた。わたしには判らないがチンチラ的に通り道っぽく見えるらしい。


三日。未練がましく山腹を歩かされた。


そうして次の目的地に移動することにした。



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