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床下の迷宮  作者: へますぽん


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38/92

杵柄?

スリングから抜けだしている相棒が耳を長いヒゲでくすぐりながら囁く。

「瑞希。動くなよ」


常緑樹の落ち葉をちいさくカサカサいわせながら走り去って行く。

後ろから藪をかき分けながら悪態をついている男の声が聞こえる。


「それほど遠くに行っているわけがないっ。見つけるぞ」

「キノコ狩りかよっ!」

「ばぁか!山狩りってんだよ」

「うるせぇ。トラ刈りがぁっ!」

下卑た声がはしゃぎながらどんどん迫ってくる。近くに来れば、伏せているの丸見えだろうな。


んごぉっぉぉ!!

叫び声と転倒する重い音がした。

「どんくせぇ。あんよもできねぇかよ」

「転けたぐらいで大げさに」


「…おい?」

藪を引き返して行く。かき分ける音がわずかに遠のく。


「やばいな。気絶してる。膝の傷から血が止まらねぇし。頭の傷もあるから、キノコなんざどうでもいいから、引き上げるぞ」

「なんで膝と後ろ頭と両方から血だしてんだよ。単独事故で派手すぎるだろ」

「あー。なんか忙しかったぞ。転けた拍子についた膝に刺さったんだよ。で、あせってのけぞりすぎて尻餅をつくはずが後ろにころげてぶつけてるんだ。わぁ。けっこうキレてる」

「身体重いからな。自重プレイか。どうすんだよ。担いで降りるのか?」

「降りるってほどの勾配じゃねえし」


興が冷めたふうで引き上げの算段を始めた。


街道に引き返す男の声が遠のくが、絶叫となにかが倒れるか引きずられるような藪の折れる音が何度か混じる。


顔を地面に突っ伏してそれを聞いていた。

こわかった。


「瑞希。もう大丈夫。起きあがって良い」

「豪天号?もう街道は通れない?」

「報復はないと思うけれど、野次馬が増えるかもしれないね」


閉所とゲリラ戦でにわかに劣ることはないんだよ。と小さなチンチラが大きく出る。

足元に躓くように下草にまぎれて線を張って、転ける場所に尖ったモノを仕掛けておく。それは巣穴でのルーティンにすぎない。巣穴ならもっと複雑にギミックが仕掛けてある。

身体が前のめりになったところで横から突く。

あるいは躓いた先に落とし穴。

その落とし穴が深い水たまり。

急な仕掛けで凝ったことはしていないとモジモジとヒゲをこする。もしや、照れ?

あんなえげつないトラップを仕掛けて、初心うぶなの?


「退散する連中にも同じような?」

足元に浮いた石をまばらに置いておけば、降り勾配で不安定になっているので自爆しただけ。

ちょっと尖ったものも置いてあるけど。

すこし葉っぱの下の地面が濡れているけど。


やはりちょっとした里山でも軍手と長袖と農作業スパイクが必須だね。




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