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床下の迷宮  作者: へますぽん


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一人旅

ほぼ情報のない土地を移動する不安。

先行きの不透明さ。

同行者は小さなチンチラ。

曖昧なのに気持ちにかかる負担が大きい.

それは、もう心細く案じられてならなかった。


が。


心配を、不安を、漠然とくよくよしていられたのは

結局余裕があるからなのよ。

もっと無事を楽しんでおけばよかった。




外套のなかで、背嚢の間にもひんやりした風をバンバン流していると

外套は弾丸の形にも似た膨らみになり

遠目に見たら、薄茶色のメジェドさまっぽいかもしれない。

眼を描こうか。


街道を『高速移動するアミガサタケ』は、野次馬の関心を(そそ)ったらしい。

後ろから疾駆してきた騎馬の一団が叫んでいる。

「いたぞ!お化けキノコだっ」

次々に野太い声が応じる。馬の蹄の音が街道に響く。


不穏な気配に慌てて走りだすが、馬ほど速く走れない。


たちまち追いつかれてグルグルと周りを走りながら囲まれる。

西部劇でリンチにあうシーンってこんなじゃなかったか?


「…っひぃぃ」

一人旅って攫われるか、盗まれるか、命の危機かって言っていたけど、早速か。

走って逃げるって言ったけど、馬に追われたらやっぱり敵わないじゃないか。


すまないな、どこかで待っている轟天号の伴侶ちゃん。

君に会うことはないようだ。


「瑞希、囲みを破れっ!街道から外れるぞっ!」

外道が絶好調でヒャッハーって嗤いながらグルグル周りを疾走している状態から、どうやって抜けるって言うんだ。

世紀末救世主が現れて助ける、そういう場面なんだぞ。

そんな人影はないので、旅も出だしからいきなりヒロイン(わたし)は儚くなる事態な。


だって無手なんだから。


…あ。そうか。

手が。


「水球」「水球」「水球」「水球」「水球」「水球」


馬の鼻面に片っ端から水玉を当てる。

突然、水滴が鼻の穴に入った可哀想な馬が咽せる。

ごめんね。

怪我をさせるかもしれない。

だが、わたしは我が身が最優先でかわいいんだ。

ごめんね。代わりに馬肉になってくれ。


馬の制御がとれなくなった隙をついて、街道沿いの藪の中に駆け込む。

相棒の手際良い魔法で眼前の藪が開いて小さな通路が生じる。

走りこむ後ろから枝や葉が尻を叩くように藪に戻ってゆく。

通路がどんどん細く低くなり、わたしは屈むよりひざまづくようになり、這いすすむ。


腹にも袖にも枯葉や小枝、湿った土や小さい節足動物がつく。

どうでもいい。

地面に突っ伏して、はぁはぁとこみあげる荒い息を両手で覆って、気配をころす。


藪の向こうから悪罵する声と藪をかきわける音と布の擦れる音がする。

続きは土曜日朝6時です

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