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床下の迷宮  作者: へますぽん


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焦がれる

わたしに乗って行けば、距離も稼げる。

わたしの食事や運動能力について主様の御加護がある。

どうして今すぐ迎えに行けないのか。とれてしかたがないようだ。


そりゃ、おまえ。わたしの恋路じゃない。これに尽きるよ。


巨大ロボットものは基本操縦者に従う。

マシンに意思がある場合も操縦者が優先。


しかし、豪天号が搭乗しようとしているのは、わたし。

年頃女子ちゃんだ。

御機嫌を取るとこからはじめてもらおやないか。


なんて面倒なことは言わないけれど

着替えとか足回りの補強とか豪天号を納めるためのスリングとか汗対策とか虫除け。

食事の心配がないのはすごく便利だけどそれ以外にも準備はいるだろう。

宿泊の用意もいる。

せっせとシナモンやサファイヤの助けを借りて頑張っているのだ。


落ち着いて欲しい。

「なにも手につかないんだ。

ずっとそわそわして、ただただ気持ちが空転して気持ちばかりが急いて苦しい。

迎えに行ける。そう思ったときからどんどんどんどん早く。早く。って」


恋煩いってそんなかんじなの?


会ったこともないのに?


諦めていた相手を探しに行く。

繁殖相手を得られるかもしれない希望。


たぶん、ない。かなわない。

現状でいえば、旅に出たけど帰ってこないか手ぶら。

外から来たメスは現存していない。


薄い望みを他人事で聞いたら

諦めろってしかいわれない。と知っているのに

それでも。

どうしても。

持ってしまった望みはついえない。

じりじりと胸を焦がす。

「もう昼も眠れないし、夜も起きてないんだ」

そういう相棒に返せるのは

「昼間に寝てしまうと、夜は眠れなくなるそうよ。旅先では疲れるからサイクルが整うわ」

ありふれた慰めだ。


ひょっとしたら望みが叶うんじゃないか?

そう願うときが一番苦しい。

諦めることもできないし、安堵することもない。


毎年の春先、四車線の国道の向こうに待っているハニーを求めて渡るオス猫が事故に会っていた。

通りの向こうにも居ないってば。

国道の向こう側も普通の住宅しかないから、そこは諦めろ。

お前の側でハニーとの出会いは探せ。

っていつも念じていた。

猫に翼があったら、であっていたんだろうか。

そしたら大量の仔猫が発生するのでそれもまた困るな。


鳩も春先けっこう事故にあっている。繁殖期のせいなのか。

車と繁殖期って相性が悪いのかな。


てぬぐいを2枚縫い合わせて折り伏せる。

丁寧に針を運びながらつらつらと思いを馳せていた。


丈夫に繋いだ輪は相棒を収めるスリングだ。

わたしはロボじゃないからコックピットがない。

赤子のようにスリングで抱いて行く。


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