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床下の迷宮  作者: へますぽん


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帰れない

ええええぇぇっと。

叫びそうになるのを飲み込む。チンチラは耳が良いし、大声は隧道に反響するから好ましくない。


自制が効いたのはそこまでだ。


どうしよう?どうするのが適切?

へたへたと膝から崩れ落ちてうずくまる。


ねぇ。

待って。

違う。

おむすびを転がした爺さんも雀のおうちを訪問した爺さんも浦島氏も、ちゃんと帰還しているのに?

「わかった。主様にお願いをすれば、叶えてもらえるんじゃない?」


「開口部は用意してくださるだろうが、どこにつながるか、分からないぞ?」

叔父の小屋の下も偶々開いちゃっただけらしい。不本意な穴だったが、周辺に気配があったので緊急で侵入者対策通路を設けた。

臨時の通路なので仕上がりが不本意だったのに、大量の人員が殺到したせいで

キャンセルした。と。


さっさとお(いとま)するべきだったのだ。

逃げこみ先を誤ったのだ。


でもなぁ。逃げなかったら。

拉致監禁無理心中がチラ見えして 怖かったわけだし。


脱力感に打ちひしがれて、床に膝と手をついて土下座状態のわたしの背に、

ほいッと飛びのって肩まで歩み寄ってきたのは相棒で、掠れた声でそっと囁いてくる。


「いずれ機会があるかも知れない。瑞希は今急いで帰る用もないはずだろう?大丈夫だ。

今日は出かけて疲れている。買ってきたものを食べて休め。動揺したままでいい思いつきは出ない」

そう言ってわたしの背に座ってシパンシパンと長い房付きの尻尾を打つ。


この姿勢(ニンゲンイス)で食事も休息も取れないんだが?



銀行口座の現金は使えなくなり、

リュックの中身が全財産となったとても心許ない状態で、とても迷ったけれど

翌朝、山吹に決心を伝えに行った。


「主様に贈り物とお願いがあるのです」

小さなカゴに昨日買った土産の焼き菓子を入れる。

菓子が敷いているのは、キャラメル大のレアメタルだ。

「……桔梗屋、おぬしも悪よのう」

「瑞希、なにを?」

「ん?お代官様には敵わない話?」


街で轟天号に勧められた通り、残りわずかな資産を減らすことになっても、

轟天号のような(まじな)いを賜りたかった。

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