市街地
斜面にまばらに生えた樹々の間を抜けて、ぼうぼうに茂る草地から街道に向かう。
頭頂部にガッツリと陽射しを浴びているが、暑いというほどでもないし、かき分ける青草からムワッと上がってくるほどの草いきれもない。
高原の爽やかさ。湿度が低い風が緩く、襟の汗をひいてゆく。
遠くに城壁が見えるあたりから、果樹園や放牧地が広がる。
「ねぇ!轟天号。羊、羊いるよっ!」
「…?あいつら根こそぎ草食うから嫌い」
柵の外から見つめるわたしを避けて向こうにいってしまう羊に冷たい発言をする懐の相棒。
「ほら、立ち止まるな。あまりジロジロ見てると家畜泥棒だと思われる」
「会社でいつか飼ってみたい動物ってあげたとき、三人も羊希望だったのよ」
気候が合わないから、住環境が許さないから、移住込みで考える案件だったけど。
ここでは飼育できるのか。
そうだよね。だって、チンチラの毛皮、細い毛がみっちりで高温多湿なんて耐えられないつくりだ。
冷涼な気候なんだろう。
避暑地ってことだ。
冬にここは厳しいだろう。
早めにおいとましなくちゃな。
街道は未舗装だが道があるだけでも歩きやすい。主様のご加護のおかげで石やでこぼこもものともせずスタコラと歩を進めて、ぐんぐん街が近くなる。
衞門をぬけて人の流れに続くと、少しづつ小さな露店が増えてゆく。
近隣の農家の作物や手仕事が荷馬車の上に並べられて売られている。
通りに留めた荷馬車と足を止めてそれを眺める人のせいで道が狭まり行き交う人がガツガツとぶつかる。
「ちょっと轟天号と一緒に買い物するのは難しいね」
「ぶつかられたら潰されそうだな」
懐のチンチラを庇うように肩を丸めて先へ進む。
街の中心部にはロータリーとそれを囲むゆったりした舗道があり、テラスで軽食を楽しむ人たちもいて
さっきまで道でぶつかっていた無造作な通行人とは違うゆとりのある様子だ。
「とりあえず、買取ってくれそうな店を見つけなくちゃ」
質屋さんってあるのかな。




