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床下の迷宮  作者: へますぽん


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21/92

買出し

かくして、わたしは、オオカミを振り切って走る素晴らしい足を得た。ってことになったわけさ。イマイチ納得していないんだけど。

野良犬とはちがうのよ?いや、野犬も恐ろしいが。


だって、そんな駆けっこ早いならオリンピック出られるじゃないか。

それで食べていけそうじゃない?実業団?


「だってね。轟天号、オオカミは長距離を追い続けることができるって児童書で読んで育ったわ。

執拗に臭いを辿って群れで頭脳プレイで狩る。

今までみたいに巣穴に逃げ込んでゴールじゃない」

そういうと、彼はクシクシとマズルから髭から頬、耳の後まで小さな桃色の手で掻きまわす。

散々、毛並みを乱した彼は毛繕いしたはずなのにボサボサの顔で

「なぁ。こないだの金属(ピカピカ)、もう一つ出せないか?」

豪天号はわたしがポーチから出すのを見ていたから知っている。手持ちが一個じゃない。


「どうするの?」

無職なので激しく資産を食い潰すのは恐ろしいのだが。


「主様にお前もまじないができるようにお願いするためにさしだす」

「ないない?」

「そう。他にも保守通路で使う呪いは幾つかある。オレはそのおかげで探索から生きて帰った」


命あっての物好きだから。それは主様に捧げるね。ふんふんと頷く。


あー。でも、どうしよう。元上司が引き上げた後。

愛車は転げ落ちて廃車、小屋は破損したし、就職先の目処が立たないのに、貯金をガンガン使ってる。心細いわ。

近い未来への不安と変質者に対する恐怖と獣による直接的な命の危機と、恐ろしさの山盛りMIXパフェ状態で胸がいっぱいになる。


豪天号が懐からよじよじと登って肩にのる。

「…こわいんだな。こわいよな。でも、きっと主様が呪いをくださる。あの男も退治できる。順番に一つずつ、終わらせろ。まとめて全部できなくても、一つずつ進めていけば終わるからな。大丈夫だ。

大丈夫じゃないときは死んじゃってるから、やっぱり問題ないんだ」


チンチラジョークはちょっとわかんない。



街までの道に出るまで、けもの道を辿ったり、藪を漕いだりしながら進む。

まばらに木が生えた緩やかな傾斜を下って行く。

途中、豪天号がヒトの食べる草を教えてくれたので採集しながら進む。

木イチゴはその場で食べた。パキッとした酸味と微かな甘みとガリガリとした種の食感が印象的でこれで腹を満たすのは無理と思う。

木の実はコクがありつつ渋みが勝り、煎って渋皮を丹念に取り除くか、挽いて流水でアクを晒すなどすればどんぐりクッキーに向いていると思う。

ぜったい、街で食べ物を手に入れたい。

続きは土曜日の朝六時です

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