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床下の迷宮  作者: へますぽん


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19/92

新 轟天号

「そろそろご飯がない」

私がそう言うとチンチラ達がビクリッと身体を震わせる。

「いや。いくら雑食でも世話になってる先の相手を喰うのは無理だから」


「でも、お前は干し草を食わないだろう?」

グレーが小首を傾げて見上げる。

カワイイ。


「小屋に戻るのも、あと何日かは避けたい」

ばったり出会っても逃げられると思うけど、それでもこわい。

「草刈り場の周辺で芋とか生えていないのかしら?」

自然薯、あるいは芋じゃなくてもジャックフルーツみたいな腹にたまるもの。


「そんな良いものがあれば畑なんかやらねぇ。ましてここを荒らしに来るわけねぇ」

別のグレーがちっちゃい手を振って否定する。

「木ノ実が多少。あとはベリー類。ハチや鳥と競合するので朝早い時間ならありつけるかも」

厳しい戦いである。そのうえ、自身が獣のエサになるリスクを抱えている。


「買い物ってそっちではできない?」

「買い物はカネが必要なんだぞ?」

すごい心配をしてくれる。なんて良いチンチラだ。

「食べ物代くらいにはなると思うの」

アクセサリーを換金できれば数日分の食べ物代になると思う。なってくれ。


チンチラに用意してもらった現地人の衣類を身につけ

二足三文にしかならないだろう、淡水パールのイヤリングとシルバーxアクアマリンのリングを小さな巾着に収め

ブラックベルベットを道中の案内役として懐に隠して出発する。

「絵本の登場人物がこんな身なりをしていたわ。学芸会に出るみたい」

「浮かれているとオオカミが出たとき逃げきれんぞ」

「ひぃぃぃっ」

ただ草地を進んでるだけで不安が募る。

深い藪を足早に進む。

「ねえ。ブラックベルベットはどうして町への道を知っているの?」

「そろそろオレも名で呼ばれたい。瑞希」

黒毛呼ばわりはイヤか。そうだよね。

「お名前は?」

「瑞希がつけろ。お前には発音できない」

「では、轟天号」

相棒の名前はひとつだけ。前の相棒は地震でもう廃車だ。

歴代の相棒は私を乗せてくれたが、この相棒は私を乗り物にするのだな。かわいい。


はじめての有機物の相棒(轟天号)

彼は年頃のオスなので、伴侶を求めて辺りの探索に出たのだ。

そして、近隣にはチンチラのコロニーがないことが分かったそうだ。

副産物として人間の群を発見した、という。


「なるほど。デリケートな内容でしたね」

「いいんだ。これからは、お前を伴って更に探索範囲を拡げるから」

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