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床下の迷宮  作者: へますぽん


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本命通路

本通路という迷宮らしい迷宮を見に行きたいとチンチラにせがむ。


現場は暴れる侵入者や多重化した罠が大量に仕掛けられているので、うかつに触った保守チンチラですら怪我を負う危険なところである。とチンチラにみっちり囲まれて説き伏せられる。


「ちょっと入り口の辺りだけ、暴れている人間が居ない時に。っていうのは?」

この注文が多い迷宮側とどれほど違うのか、気になるよね。


決して本通路に触れない。壁も床も天井にも触れずに保守通路から覗くだけだ。と約束をして

見せてもらう。

何しろ一族が営々と築き上げてきた誇り高い構造物だ。

ちょっと自慢してもいいじゃないか。



チンチラが保守で通るには天井がずいぶん高く幅も広い、岩を抉った通路を案内される。

「資材を搬入するからな」

ブラックベルベットが腕の中でそっくり返ってヒゲを広げて、偉そうカワイイ。

「成獣に向かって失礼な女だ」


夜行性なので、にやけているのが丸見えか。


「ここから音を立てるなよ」

カクカクと首を振る。


チンチラが腕から降りて岩の隙間を示す。

ここから覗きこめということらしい。


外の光が微かに差しこんでいるココが入り口。

丸く巣穴のように開いている。

中は天井が低い。人間だと中腰から屈むくらいの膝と腰に辛そうな高さ。


枝の折れる音、草をかき分ける音、衣ずれと足音がして

男が入り口から現れた。


頭巾を被っていること、ワイルドな処理の皮革衣料を着ていること、頭巾からはみ出して首元でくしゃくしゃの明るい茶髪、そばかすのある日焼けした肌、目元が影になる凹凸の激しい顔立。見慣れたモンゴロイドではない。

映像化され見慣れた冒険活劇らしい出立ちだ。

当然装備は短剣を持ち、反対の手にはカンテラっぽい灯火をかざし、天井の低い通路を前傾して歩を進める。

遊園地のアトラクションにしか見えない。


だが。

隙間から見えなくなってまもなく

ッンン!グワァ!

通路にくぐもった叫び声が響いた。

「罠にかかったんだ。しばらく聞き苦しいだろうから、こっちの通路から戻るぞ」



「物騒だってわかっていないの?」

「欲深いんだよ。俺の皮を剥ぐといくらになると思う?」

「知らない。愛玩のグレーのチンチラは60000円くらいで売買されてるって聞いたことがある」

「貴族がな1000匹殺して外套にしたそうだ。ちょっとした屋敷くらいの額になる。俺は特に人気だとよ」

「嬉しくない人気だわ。それでここにいるチンチラを狙って来るのね」

続きは明日6時です

月曜と火曜に更新しています

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