独居中
諸般の事情があって叔父の手づくりログキャビンにて生活中のもと社会人。
小さい頃、従姉妹たちと夏を過ごした楽しい小屋にわずかな荷物と共に転がりこんでいる。
周りには叔父の友だちが作った小屋が廃屋になっていて、まあまあ味のある廃村感を出しててやばい。
叔父とお友達は土木スキルがある専門職でそれぞれの技術を持ち寄って
手づくりログハウス群をここにキノコの群れのように出現させた。
整地、基礎打ち、電気水道設備、さらに言えばネット環境もバッチリだがガスはプロパン。
市街地まで車で40分と微妙な距離だ。
ショッピングモールはさらに20分先。
子どもが小学生までの頃は、毎週集まって、小屋周辺の低山散策、沢へのピクニック、ほたる狩り、BBQ、花火、きのこ狩り、ミニ畑作り本当に色々楽しくさせてもらった。
中学生になる子どもが多くなる頃から
部活、通塾で欠ける子どもが増えたのと叔父たちも仕事が忙しくなって都合がつかなくなっていった。それでも夏休みなどには何度か懐かしい顔に会いに行った覚えがある。
わたしはその後、県外の大学に進学して、そのまま都内で就職した。
10年以上放置された小屋は森に還ろうとしている。
叔父はそれでもしぶとく抵抗していたようで、材は防腐処理が継続されていたし、水道のパッキンも生きている。
テレビはアナログ放送のブラウン管40インチ、デカいガラクタになってて砂嵐しか映らないオブジェになっているけれど、スマホが使えるから天気予報もニュースも得られる。
大丈夫。
屋根があるだけでいい。そう思ってキャンプ道具と着替えを持ってここに来た。
明け方、ガッスガッスと力強くわたしを揺さぶる、寝床ごと。
やめろ。コットが歪む。
誰が揺らすんだよ。独りだぞ。
鴨居にかけた上着が揺れている。地震か。
認識している最中もなお身体は小屋ごと揺さぶられ続けている。
「止めろ。おっちゃんの小屋が壊れちゃうじゃん」
長い。
強い。
ギッコリギッコリ。
軋る音がする。
何かがガシャンガシャンと当たりながら壊れる音が聞こえる。
「出口の確保!」
足元がふらついたが、幸い戸は開くことができた。
落ちたものも壊れたものもない。
地震や台風の時、独りで過ごすのは心細く恐ろしい。
新しい話をはじめました。
こちらもどうぞよろしくお願いします。
続きは明日の朝六時です。
小学生で迷子になっている。の連載終了まで、月、火更新します。