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塞ぎ込む王太子

 「ドキゆらキャンドルナイト」のエンディングであるアランとミリーの初夜とともに、この世界も終焉を迎えるという私の仮説が正しかったのかどうかは、今となっては検証のしようがない。



 とにかく、結婚式以降も、この世界は終わらなかった。


 

 お城の御一行は、惨劇の翌朝の船でお城に帰還した。



 そして、これまでどおりのインドアなキャッスル・ライフへと戻っていったのである。



 

 完全犯罪の実行という山場は乗り越えたものの、私に課されたゲームはまだクリアとはならない。


 私は、元婚約者であるアランと結ばれなければならないのである。



 アランは、新しい婚約者だったミリーを突然失ったことで、お城に戻ってからもずっと塞ぎ込んでいた。


 食事の席でも終始顔色が悪く、簡単な挨拶を除けば、ほとんど何も言葉も発しない。



 彼が前を向き、私との結婚を決意してくれるまでは、まだ時間がかかりそうである。



 とはいえ、もう邪魔者は誰もいない。


 あくまでも時間の問題なのである。


 果報は寝て待て。私は、王太子のメンタルが回復するのをじっと待つことにした。



 アランはそんな感じだったが、ミリーが消えたお城での生活は、私にとっては、今までと見違えるほどに快適だった。



 クシャル、ロウ、カシージョの私に対する態度が、あからさまに違うのである。


 このことは、完全犯罪計画の、良い意味での副作用だった。


 真犯人によって犯人に見せかけられ、絶体絶命の窮地に追い込まれた彼らにとって、私は、虚偽のアリバイ証言で彼らを救った救世主なのである。


 

 そもそもの真犯人が私であることに気付かない彼らは、決して口にはしないものの、私に対して多大に感謝しているようであった。



 今までは「マチルダの分の料理は作りたくない」と駄々を捏ねていたクシャルは、毎晩、私のためにデザートを用意し、私のお皿にのみそれを載せてくれるようになった。



 ロウも、私が庭に出るたびに護衛役を名乗り出てくれる(毎回丁重にお断りしていたが)。



 カシージョに「私って綺麗?」と再度尋ねてみたところ、「宝石で例えるならば、オーパーツだ。この時代には存在してはならないほどに美しい。君は宇宙から来たのかい?」などと、おそらく彼にとっての最大限の賛辞を送ってくれた。



 正直、悪い気はしなかった。


 このようにチヤホヤされて生活できるのであれば、もうしばらくはゲーム世界の中にいても構わないとすら思った。



 過酷な試練の立て続けであった私の転生ライフは、ここに来てついに順風満帆に上向いたのである。




 しかし、順調な日々は、予想だにしなかった突然の報せによって、一気に崩れ去った。




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