三種の神器
洞穴にあったのは、仰向けに倒れていたミリーの死体である。
脈を確認する必要などない。
この状態で生きているなどと思う人は誰もいないような、惨たらしい姿だからだ。
一糸を纏わぬその死体は、全身血まみれで、全身傷だらけである。特に出血が激しいのは両手であり、各指がそれぞれバラバラな方向に曲がっていた。
加えて、首には何重にも重ねたような痣がある。
生前に彼女が着ていたウエディングドレスは、同じく血まみれで真っ赤な状態で、洞穴の片隅に落ちていた。
幸せの絶頂にいた花嫁を、このような姿に変えたのは、言うまでもなく私である。
決して、私の趣味ではない。
それどころか、グロテスクなものは苦手なので、最中、何度も嘔吐をした。
身体全体にこびりついた死臭が気になってしまい、執拗にシャワーで洗い流した。
そこまでしてでも、私には、死体をこのように演出する必要があったのである。
「一体誰がこんな酷いことを……」
放心状態のアランが、ぼやくように言う。
放心状態であるのは、他の男性陣も同じだった。
もっとも、彼らは、アランとは別の理由で、心ここに在らずなのである。
彼らが怯えた目で見ているのは、全裸の死体の周りに飾られた宝物だった。
いずれも純金で作られ、煌びやかなダイアモンドがあしらわれたベルト、鏡、ネックレスの3つのお宝。
お城に住む者に、このお宝が何かが分からない者はいない。
このベルト、鏡、ネックレスは、この国の王族が代々受け継ぐ「三種の神器」なのである。
創世の神が、この国の初代国王に授けたとされる三種の神器は、国の統治を神から任されたことの証明であり、王族が政治を行うことの正当性を裏付けるものなのである。
そのため、三種の神器は、お城の宝物庫で厳重に管理されてきた。
まるで拷問されたかのように指を1本1本へし折られた全裸死体。
その周りに置かれた三種の神器。
この「見立て」が意味するものを、クシャル、ロウ、カシージョの3人は、一瞬で理解したはずだ。
3人の唖然とした表情からそのことを悟った私は、完全犯罪の計画が上手くいっていることを知り、心の中でガッツポーズをした。
「おい!! 一体誰がミリーをこんな目に遭わせたんだ!!」
アランが、今度はヒステリックに叫ぶ。
しかし、誰も何も答えない。
それどころか、私以外の3人は、アランに目を合わせようとすらしなかった。




