9話 決意
新たな力【スキル使い放題】を得るとともに現世に舞い戻ったタケシ。運命のあの日から、2,592,000秒が過ぎようとしていた。
「朝か…。」
上る朝日とニワトリの鳴く声がタケシに朝を告げると、タケシはパチリと目を開き、呟く。
「駄目だ…。今日も眠れなかった…。」
タケシは不眠症に悩まされていたのだ。
タケシが眠れぬ理由は【スキル使い放題】にあった。
この世に存在する全てのスキルが使えるようになる…。
一歩間違えれば世界を滅ぼしかねない力を手にしたタケシは今日もお布団の中で考える。
(俺にこの力を正しく使う事ができるのか…?)
強大な力を手にした人間が、弱者に力を振るい虐げる様をタケシは何度も目の当たりにしてきた。
自分より立場の低い人間に横暴に振る舞い、挙句の果てには暴言、暴力を行使する。
【パワハラ】
それはタケシが最も憎む物の一つであった。
自分も強大な力に溺れ、パワハラを行う側の人間になってしまうのではないか?そんな不安がタケシを安眠から遠ざけていたのだ。
その時だった!
ドカッとドアを蹴り破り、包丁を持った強盗がタケシの家に侵入して来た!強盗はタケシに包丁を突きつけ叫ぶ!
「オカネ!オカネ!!」
タケシはとっさに布団から飛び出し身構えると、【スキル使い放題】の力を使い呪文を唱える
「パワ!」その瞬間強盗に、同僚の前で上司に「お前はバカだ!」と罵られた様な感覚が込み上げる。
「パワハ!」タケシがそう叫ぶと強盗に、同僚の前で「使えない」「いない方がマシ」「何の役にも立たない」と言われたと思わせる程の精神的ダメージを与える!
「これでトドメだ!パワハラ!!!」タケシ渾身の大魔法によって凄まじい暴言、暴力の奔流に飲み込まれる強盗。
強盗を心療内科送りにしたタケシは決意する。
(俺はこの力を正しく使って見せる!)と。