4話 妖刀
武器屋に武器の調達に来た俺は。妖しい雰囲気を醸し出す一本の鉄パイプに心を奪われ、手を伸ばそうとした。
その時
「お客さん。そいつはやめときな。」
「そいつは呪われてる。妖刀ってやつだな。」
背後から掛けられたその声に俺はハッとなる。
俺に声を掛けたのは、頑固そうな。一見すると岩を思わせるような。一見すると火成岩を思わせるような。一見すると変成岩を思わせるような。一見すると堆積岩を思わせるような。岩のような無骨な男であった。
「あなたは?」
タケシはその男にたずねる。
「儂はこの店の店主ソリマチってもんだ。」
そう名乗った男はこう続けた。
「そいつは…いわくつきの鉄パイだ。そいつを手にした奴には必ず不幸な結末が訪れている…」
タカシは、そんな危険な物を売り物にしている店主に戦慄を覚えた。と同時に「コイツ頭おかしい」とも思った。
タケシは恐る恐る店主に尋ねる。
「この鉄パイには一体どんないわくがあるんだ…?」
店主は神妙な面持ちで答える。
「それは儂にもわからん。ゴミ捨て場から拾ってきた物だからな。」
タケシはそう言い放つ店主に再び戦慄を覚えた。と同時に「やっぱコイツ頭おかしい」とも思った。
だが
「俺はこの鉄パイを買うぜ!俺もパーティを組んでた仲間に捨てられた…。この鉄パイもゴミとして捨てられた…。きっと俺とコイツはお互い引かれあったんだ!」
タケシのその人情味溢るる言葉を聞いた店主は。
「粋だねぇ。気に入った!そいつは持っていきな
1980円でいいぜ!」と豪快に笑いながらタケシに言った。
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鉄パイに貼ってある値札の980円という数字を見ながらタケシは三度目の戦慄を覚えたのであった。
鉄パイを手に店を後にしたタケシは、店の入り口に立てかけてある武器屋の看板の前に立ち鉄パイを正眼に構え。そして
「はぁぁっ!」裂帛の気合いとともに鉄パイを看板に向けて何度も振り下ろす。
しばらく後。鉄パイプによる殴打を受け、二つにへし折れた看板を見てタケシは呟く。
「一太刀で看板が真っ二つになっちまうなんて…。なんて切れ味だ。」
棒状の物を持った男は、時には侍であり。時には騎士であり。時には勇者にもなるものだ。それはタケシも例外ではなかった。
「妖刀だろうがなんだろうが俺が使いこなしてやるぜ!」
決意を胸にタケシは猪狩りに向かう。と同時に「なんだか人を切り殺したい。」と思うのであった。
タケシは呪われてしまった!