表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

14/17

【真実の愛】

タケシは霊魂となり街を彷徨っていた。


タケシは【ストレス】という毒に侵され死んだのだ…。


「まてよ…。」


タケシはふと昔聞いた事のある話しを思い出した。


クラゲやハチに刺された時は人間の小便をかけると良いと。

それはつまり毒は、小便をかけると治る事を意味する。

そこから導き出される答えは。ストレスという現代の毒で死んだタケシに小便をかければ、生き返る事が出来るという事だ!!


          「これだ!」


タケシは街の大通りに向かって猛然と走り出し、到着するやいなや街の人に大声で呼びかける!


「どなた様か、私にお聖水をかけて下さいませっ!」

「どなた様か、お聖水をお分け下さいませっ!」


幽霊になり色々な物を失ったタケシだったが。道徳心だけは今もなおタケシの心に残っていた。なればこそタケシは

「小便をかけてくれっ!」とは言わず。綺麗な感じのする、

「お聖水をかけてくれっ!」に言い換えたのだ。


「どなたかお聖水をかけて下さいませっ!」

「どなたか!」

「どなたか…」


街の人はタケシを、まるでゴミを見る様な目でみている。



       (あの時と同じだ)


やはり自分に、お聖水をかけてくれる人間などいないのだ……。


絶望し、全てを諦めかけたその時だった。タケシに一筋の光明が射す!


「【スキル使い放題】この力で、俺は運命を覆す!!」


「はぁ!スキル【鉄パイプ(鉄パイ)】生成!!」


タケシは、手のひらに魔力を集め鉄パイを生成すると。

鉄パイをまるでギターの様にかき鳴らす!


鉄パイの奏でる美しい調べに乗せ、タケシは歌を唄う。

         愛の唄を!


他者との関わりが薄くなった現代。人々は愛の持つ力を段々と忘れていってしまった。


「俺がこの歌で思い出させてやる!真実の愛をっっっ!!」


タケシの神がかった鉄パイの演奏テクニックと、カブトムシの鳴き声を彷彿とさせるその美しい歌声は、愛を忘れた街の人々の心に、【真実の愛】を届けたのであった。


タケシの演奏に足を止め、耳を澄ませていた人々は、タケシに向け万雷の拍手を送る。


街の人々はタケシに「感動した!」「真実の愛を知った!」

と口々に賛辞の言葉を投げかける。


タケシの前に置いてある鉄パイケースに我先に、とお金を入れていく人々を見て、タケシは声を張り上げる。


「皆さま!本日は私の演奏会にお越し頂きまして、誠に有難うございます!」


「つきましては皆様にお願いがあるのでございます!」


「私にお聖水をおかけ下さいませっ!」



その瞬間。先程まで鳴り止まなかった拍手の音はピタリと

止まり、場を静寂が包み込む。


尊敬と羨望の眼差しでタケシを見ていた街の人々の目は、いつの間にか、まるで狂人を見る様な目に変わっていた。


タケシはその目を見て悟る。真実の愛は敗北したのだと。


そもそも真実の愛とはなんだったのか?それは誰にも。もちろんタケシにも分からなかった。






        雪の降る寒い朝だった。


         街の大通りでは

        一人のいなせな男が

          冷たくなり

       横たわっているのであった。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ