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3.契約魔法陣。下僕への序章


それからしばらくたったある日のこと。

「アレク〜、魔力がうまく回ってないよ!そんなんじゃ、魔力が無駄になっちゃうZo♪」


パァーンっ!!


「うわっとネフィ!鞭を仕舞え!当たりそうでこえぇよ。」

ネフィは、SM嬢らしく鞭をぶんぶん振り回しながら魔術を教えてくれている...。


「大丈夫!私プロだから、当たらないよ〜。やっぱり、教鞭をとる時は鞭が必要だよ!雰囲気大事ぃ〜。」


パシパシっ、ビュン、ギュンっ!!


「いやいや、おかしいし!アルプスのハイジのロッテンマイヤーさんだって、棒の鞭だった!

そんなグルングルンしている鞭おかしいぜ。カウボーイもびっくりだ!」


ネフィは、ラバー素材でできた縄鞭:ブルウィップをこよなく愛しているらしく、それを常に持っているおかしな令嬢だった。

失敗すると、鞭が振り下ろされ体ギリギリを鞭が通ってく。


気が抜けない....。


「でも、確実に良くなってるよ!今のままでも魔力でゴリ押しして、余裕で魔術行使できるけど、もったいないよ。最初が肝心だよ!エコに魔力を使ってながーく使おう?」と心配してるような顔で俺に諭してくるが、騙されないっ!!


こいつは、見た目美少女の顔して腹黒いんだ!

隙あれば理想の下僕にしようと画策しているんだ。


こないだなんて、木の枝でザクっり腕が切れて、結構血が出て慌てていたら、ネフィが大丈夫!?って駆けてきてくれて治療してくれたんだ。

そこまでは、天使のようだった!

だが治癒魔法が行使されて、傷が塞がりだしたら激痛が走った!

「うぐっ...痛っ、痛〜ぇ!痛い痛い」とのたうちまわっていたら、ネフィがニヤニヤしていた...。

「何をした!?痛っグゥ...。」と俺が切羽詰まりながら問いかけると、さも当然みたいにネフィが言った。


「治癒魔法!」とひとこと。


嘘をつけぇ〜、治癒魔法が激痛なんて聞いたことないぞ!と、ギッとネフィをにらめつけたら、得意げに語りだした。


「あのね、治癒の術式の中から痛みをとる陣をとってみたの。これは、凄いんだよ!

傷が治る時って自然治癒力を無理やり上げて治してるわけだから、体に負荷がかかるのは当然でしょ?

でも痛みをとってくれる陣が組み込まれてるから、普段は治癒魔法で痛みを感じない。だからね、治癒の術式から痛みを感じさせない部分を特定して、除いてみたの♪

するとね、魔力の節約もできるし、痛みを感じることで生きてる実感がわくでしょ!人間は、生きてる自分を感じれると満足感が得られる!

すごく合理的な術式だと思わない?ありがたさが湧くでしょ?」って...。


ンなわけあるか!?


「違うだろう!お前これで被虐思考のやつ探そうとしてるのがバレバレだ!全然、ありがたくねえ!痛みを軽減する魔術を早く重ねかけろ!」と俺は憤慨した。


いててててぇ...。

傷が治っても、痛い気がする...。

鬼畜すぎるぞ、ネフィ...。   

ってことがあったんだ。




だから、『エコに魔力を使ってながーく使おう?』っていうことは、『エコに魔力を使うことで、数日くらい延々と魔術を行使し続けられるような下僕になれ』

ってことじゃないかと俺は疑った。


一般の魔法使いが1000だとして、中範囲防御壁を、1時間維持出来るらしい。俺は、2千万だから...


2万時間維持出来る。833日ぶっ続けで防御壁を行使出来る....。

え、こんなに維持する必要なくないか。

ネフィ、俺に何をさせようとしてるんだ?


「ネフィ、俺別にエコじゃなくて良くないか?もう術式構築の勉強でいいと思う。防御壁軽く2年以上展開出来るって使い道ないじゃん?」


「必要だよ?防御のことしか考えてないからアレクはダメなんだ。

攻撃するときにも無駄に魔力が出たら、魔力があり過ぎて自爆しちゃうかもでしょ?

そのために無駄なく的確に魔力を循環させるんだ!攻撃は最大の防御っていうでしょ?

それに薄く薄〜く魔術を調整できれば、殺さずギリギリ生きてる状態を作り出すことができる。

なにより一番恐怖を与えられるから洗脳しやすい!」


うん、さすがSM嬢だ...。好戦的だな...。


「俺を、騎士団とか傭兵の諜報員にさせる気なのか?俺、平和主義だからそういうの無理だぞ。」


「ダメ!アレクは、私と一緒に騎士になるんだ。

私が、敵を蹴散らすからアレクはずっと私にバフをかけたり、回復魔法をかけたりして援護をする私専用の下僕になるんだ。

そのために、今私はアレクに投資している!」


力強く下僕になるように推奨するネフィ........。わけわんねぇ...。


さらに、ネフィは畳み掛けながら強要してきた。

「誓うんだ!私と共に生きると!

そうじゃないともう何も教えてやらないぞ。」と、ネフィがもう無茶クチャだ。


いや、下僕を誓うって...。絶対、嫌だ....。


でも、こいつ魔導の家門じゃなかったか?


「ネフィ、騎士になるのか?なんで?

魔法使いにならないのか?」

俺は下僕の誓いについてはいっさい触れずに、話題を逸らしてみた。


するとネフィは、魔法使いにならない理由を話し出した。

「うん、騎士になるんだ。ちょっとながーくなるけど、話を聞いてくれる?

まずここは、乙女ゲームの世界なんだよ。」


うん、訳がわからない。乙女ゲーム?イケメンがいっぱい出てくるのか?

とりあえず、俺はイケメンじゃないから攻略対象じゃなさそうだ...。残念だ。


ネフィは説明を続ける。

「それで、私は悪役令嬢なの!」


うん、まんま悪役だな。鞭を普段から使うお前は、悪役にぴったりだ。


「それで将来断罪されるんだな?典型的パターンだな。断罪されるとどうなるんだ?」


「断罪されると、身分剥奪の上隣国に追放される。」


「別に良くないか?断罪されても。それとも、お前はイケメンと結ばれたいのか?」


すると目をキラキラさせて興奮気味にネフィが力説しだした。

「そうなんだよ。貴族は窮屈だから平民になるのはご褒美だよね?!

だけど、私どうしても会いたいイケメンがいるの!

あのね、バッドエンドだとね。ヒロインが騎士科のイケメンを攻略できなくて悪役令嬢にイケメンが取られちゃうんだけど。

騎士科の攻略対象が被虐趣味なのぉぉ!

私のための犬!

わかる?このご褒美転生!!

すでに、性格がわかってるから調教なんてお手の物よ。ふふん♪

だからね、私騎士科に行くの。16歳から2年間の学園生活が楽しみなの!

とにかくヒロインが騎士科に近づかないように監視しとけばWin-Winになるの。

私も幸せ、騎士科の犬も幸せ。ヒロインも他の攻略対象と幸せになるよね!」


「...そうか、すごい奴だな、被虐趣味のイケメン..。俺には全く理解できないが。

とりあえず断罪回避するつもりなんだな?

でもさ、よくある強制力ってので断罪されることもあるよな?どうすんの?」


「そこは、隣国に行って傭兵として暮らしていくよ。だから、アレクついてきてね!新天地で一人は寂しいじゃん?」


「あー、そうだな。追放されたらついて行ってもいいぞ。そのくらいの恩返しはしてやる。」


俺は、歴史や魔術を平民なら一生学べなかったことを今ネフィのおかげで学べている。

ありがたいことだ。

それに、この土地にまだ愛着もないしなぁ。親も放任だし、大丈夫だろう。

と安心してたら、ネフィが再び迫ってきた。


「だから、誓うんだ!」


戻ってきたぁぁぁぁっ、俺結局、下僕誓わないといけないのか!?


「いや、下僕はちょっと無理...うわぁっ!」


パシーンっ!!ブルウィップが振り落とされた。

今避けなければ、当たってたぞっ。クソアマ!


「誓え!常に共に生き、私専用の下僕になると!

嫌なの?...そう。

じゃあ、しょうがないから、下僕は今は(・・)諦めてやる。」

ネフィは鞭をぶんぶんバシバシ叩きながら言い募る。


かるく脅迫だ。

そのあと小さな声でネフィが「.....長期戦で、調教してやる。」と呟いた。


恐ぇぇっ!!


「わかった!なるべく(・・・・)お前のために、生きる。だから、鞭をしまえ!」

俺は脅しに屈した。...俺ヘタレだ....。


するとネフィは、紙に魔法陣を書き出した。


何してるんだ??


「ふふーん、ふふーん♪ぐーるぐる♪

上には、神文字イーター

下にも神文字エルトー♪

右と左には調和の女神アンタール♪

中央に私の名前ネフェルティ・ヴァンキュレイトとアレクの名前アレックスを書い....てと。

最後に血判!

で〜きた♪」


「はいアレクも名前の上に血判おして。」

ネフィは満面の笑みで振り返った。


「ちょっと待て。誓うってなんか大仰じゃないか!?なんだこれ?説明しろ!」と慌てて俺はネフィに聞いた。


「これ?契約魔法陣!これで契約すると、強固のものになるの!破ると死ぬのよ。今回は、下僕は諦めるからお互いそばにあり続けるって誓いにしようか。」


「ちょっと待て、結婚の誓約の方がまだ軽いぞ!なんだその重い誓いは!?

そばってどのくらいだ?!どのくらい離れたら俺は死ぬんだ!」

俺は必死に抵抗した。


「何言ってるの?誓いに、重いも軽いもないよ。誓うってことは、こういうことでしょう?

でも、そばにっていう文言は確かに曖昧だねぇ。

うーん、生涯味方であり続けるってことにしようか?」と、さも当然みたいな顔でネフィがのたまった。


下僕じゃないし、可能な範囲か?

ようは、信頼のおける友であればいいってことだよな。


「...それくらいなら...。いいだろう。」と俺は諦めて名前の上に血判を押した。


「よし、じゃあ契約するよ〜。」


  我が名は、ネフェルティ・ヴァンキュレイト。

  調和の女神アンタールよ、今ここにアレックスと誓う。

  生きている限り、味方であり続けると...。

  承認せよ、契約!!


魔法陣がキラキラと輝き、呪文を紡ぐたびに文字が様々な色に輝き神秘的だ。最後に、強力に発光し魔法陣が燃えた。


「これで完了か?ところで魔法陣を紙に描いて魔術を行使することってあるんだな。」


「うん、今は魔力で空中に魔法陣を描いて行使するのが主流だけど、血判を使うとより強固の魔法になるんだよ。

私の下僕候補が逃げないためには、一番強い契約がいいと思って。」とニヤッとネフィが笑った。


うん、俺はもう逃げられない。


「じゃあ、もう一回魔力の循環の練習!へその上あたりに魔力の塊があるから薄く伸ばして体の形に合わせてみて。」とネフィの魔術講義がまた始まった。


「うーん、もっと的確な指示ないの?どうしても足先と頭の頂点を直径とした円状にしか広げられない。」


「えー。アレクは、頭硬いんだよ〜。じゃあさ、ほら鉄板のイメージあるじゃん!血流になぞるとうまく行くってラノベ!右心室から左心室だっけ?毛細血管隅々までってイメージ。あれでやってみたら?」とネフィが呆れて言った。


あー、あったな。そういう鉄板。でもお腹が基点だろう?ちょっと違くね?


結局、漢方の考え方臍下丹田(せいかたんでん)の呼吸法で集中することで、うまく魔力が循環出来た。やはり俺は元薬剤師だった。


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