第三話 『覚悟』
そして、俺はドアに耳を当てた。
先生は、小さくて緊迫した声でこう言った。
「お母さん、覚悟して聞いて下さい。」
その差し迫った声に母は動揺を隠し切れなかった。
「は、はい。」
そして、先生はこう言った。
「こちらも最善を尽くしてはいるのですが、お子さんの容体は悪化するばかり。持って半年です。申し訳御座いません。」
俺は、愕然とした。
聞かなければ良かったと後悔すらしている。
そして聞こえてくる母の泣き声が俺の心を締め付ける。
「ははっ。。。親に苦労させた、面倒見てもたった、苦しい時は励ましてくれた。俺を立派な大人に育ててくれる為に色んな習い事をさせてくれた。受験だって、必死に働いてくれて何とか進学校に入れた。
なのに、俺ってば、何の恩返しもせずに自分の親を苦しめてばかりで、今までの親の思い無視して不登校になった挙句に病気になって、コロリと死ぬのかよ。ほんっと傲慢で親不孝な奴だよ、俺は。
そうだ、そうだ、そうだ、そうだ、そうなんだ。俺がいなければ、俺さえいなければ、俺の親はこんなに必死になって働かなくても良かった。そもそも、俺がいなければ家計が圧迫されること無く、お母さんとお父さんは今頃犬でも飼って、二人で支え合って幸せに暮らしていたかもしれない。そう、俺が二人の人生を狂わせたんだ。こんな、いずれ死ぬような、こんなゴミ屑の俺が幸せな二人の人間の人生をめちゃくちゃにして良いわけがない。
俺はいずれ死ぬ。もう、これ以上お母さんを苦しめさせたくない。せめてもの償いとして、早く死んで楽にさせてあげよう。 」
そして俺は屋上へ向かってひたすら走った。
その決意が揺らぐ前に。
後ろからは、走った音を聞いたお母さんが必死に叫びながら俺を探す声が聞こえてきた。
「ケイト!! ケイトなの? お願いだから、出てきてちょうだい。お願い。」
そして、俺はその声を聞かないふりをして屋上についた。
「あぁ、酷い人生だったよ。」
そう言って俺は飛び降りようと、柵に乗ろうとした、その瞬間。
「うっっっ。。。 あ、頭が。。 た、助けて、お母さん。。」
今までに経験した事のないような目眩と頭痛が俺を襲った。
言葉を発するのもままならない俺は、徐々に意識を失っていった。
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???『.... まってる ....』
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読んで頂き、誠にありがとうございます。
今回はなかなか辛い展開ですね。自殺を決意したケイトだが、その直前で予想外の事件が。ケイトはどうなってしまうのか....
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