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ギルドには案の定

「ーーというわけで、あなたはギルドより脱退となってます」


 ギルド受付にて、無機質な声でメリッサにそう伝えられる。 理由は、先日の騒ぎの件。 ギルドは、あわや前科者となるメリッサを、それを理由に脱退させた。


「ちっ、つまらないな。 はっきりといえばいいのに」


 当然、それは建前である。 本音は、ギルド内で大きな発言力を持つ男の進言だろうと、メリッサは気がついていた。 かつてのパーティ。 ジョーにメリッサは切られ、居場所をなくした。


「メリッサ様。 なんていうか、ドンマイです」


「……その様ってのやめろよ。 気持ち悪い」


「ええと……メリッサ殿」


 困ったように言葉を捻り出したリリィに対し、メリッサは首を振る。


「変わらない。 まぁいいか、呼びやすければなんでも」


「じゃあメリッサ氏」


「それはいやだな」


 受付で門前払いをくらったメリッサは、外へと向かう、その途中で見覚えのある女が待っていた。


「もう、遅いよ。 君を待ってたんだからね」


「ええとお前は、たしか俺の代わりの……」


 そこにいたのは、メリッサの代わりにパーティ入りした女だった。 彼女が手を差し出して言った。


「君からもらったアイテムにゴミが混じってたの。 だから返すね」


 メリッサは手を合わせてアイテムを受け取る。 どれもレーティングがC以下のアイテムばかり。 それを大量に送りつけられた。


「いいのか? 別に捨てるのももったいないだろ」


「何言ってるのさ。 ストレージの空き容量にも限りがあるんだ。 こんなのもらっても仕方ないのさ」


 空き容量といわれて、メリッサはハッとした。 昔は、彼もよく気にしていた。 だが、レベル7を超えてから、考えもしなくなっていた。 懐かしむようにそのことを思い出し、少しだけ彼女を見下すように笑った。


「なにさ。 とにかくこんなゴミ、君のところで拾っておいてくれよ」


 彼女はそう言い捨てると、1人の男の元へと向かっていった。


「なにやってたんだ?」


「んー、ゴミ捨てだよ」


「あぁ……あいつ。 ふっ」


 ジョーはこちらへ向けて、わざとらしく鼻で笑うと、歩いていった。


「メリッサ様……」


 不安そうに、リリィがこちらを見上げている。


「気にするな、行こうか。 こんなところにいるのは時間の無駄だからな」


 メリッサは頭を撫で、集会所へと向かっていった。


 集会所。 ギルドの運営者。 あるいは無所属が集まる場所。

 フリーのクエストおよび、ギルドの斡旋を行なっている。


「メリッサ様。 新しいギルドを探すんです?」


「いや、もうただの倉庫は飽きた。 だから、俺がギルドを作る」


「おおー!! すごいです」


 パチパチとリリィが手を叩く。 だが、ギルドを作るにはいくつか条件がある。 当然、あわや前科者のメリッサに、それを達成してるはずもない。 今からその条件を達成していくことになる。


「まずはランク上げだな。 適当にフリーのクエストをやろうか」


 そう言って、受付へとメリッサは向かう。


「Aランクのクエストください」


 基本的には、フリーのクエストはクエストボードというものがあり、そこに張り出されている。 その紙を持って、依頼者の元へと向かうないしは、受付へと向かう。

 だが、高ランクになると受付でしかもらえない。 また、受付にはクエストの在庫が多くあるので、1度に大量に受注するときも世話になる。


「ええと……とりあえず、ギルドカードを拝見しますね」


 ギルドカードは、身分を証明するもの。 つまり、メリッサがDランクだとバレる。 バレたら、良いクエストなど回ってこない。


「ランクを上げて出直してください」


 受付の方の笑顔が怖かった。 メリッサは、それでも動じず続ける。


「辛辣だねえ、モテなさそうだ。 じゃあ納品系のクエストで俺でも可能なのくれ」


「……それならば、こちらからどうぞ」


 メリッサの挑発をスルーして、受付はそう言いながら、ファイルを1冊差しだす。 メリッサはペラペラとめくり見ていく。 横で覗くリリィは読んでる途中でめくられて、そのたびにおおっという表情を浮かべる。


「どれを受注されますか?」


 やる気のなさそうな対応で、メリッサは問われる。 彼は笑顔でファイルを置くと、それを指して言った。


「そうだな……とりあえず全部で」


 受付の方の表情が、さらに引きつるのがはっきりと分かった。

ギルド

  国力向上のため、戦時中に産まれた軍に準じた組織。 元は大冒険時代に現れた冒険者を管理するためのもので、国に雇われた正規の騎士、軍人たちと違い、あくまで臨時で働く者。 傭兵に近い存在。

  終戦後ではかつてのギルドの姿によっていき、未探索の土地を探すギルドや、商業を生業とするギルド。 公式ではなく、法外なクエストをこなす闇ギルドなんてものもある。

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