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騒動

 エリー部屋への訪問、ククリとの師弟関係構築と同日。 適当にそれっぽいことをメリッサがククリへと指導していた時だった。

 嫌な予感とともにメリッサがあげた視線、その先に光が見える。 光にともされて周囲が明るくなってきくのがわかった。 大きな音とともに、めらめらと遅れて建物が倒壊していく。 バベルが炎上している。


「なにが……だが、まだ間に合うぞ」


 いうやいなや、メリッサは炎へと駆け寄る。 途中、誰かとすれ違うが気にする余裕はない。 肌に熱を感じ、髪を焼きながら炎へと触れる。 収納できる範囲を拡大しながら、確実に炎をストレージに取り込む。


「メリッサか。 これは……?」


 メリッサは、焦りから息を切らしていた。 炎が消えてから、メリッサに近寄る者がいる。 バベルの主、クロードだった。 顔を黒くさせながら、彼は汗を拭いやってきた。


「見ての通りだ……お前、顔が真っ黒だぞ」


「当然だろう。 むしろなぜお前はそんな綺麗でいられる」


 クロードには、まだメリッサの能力は割れていない。 灰の混ざる煙などメリッサには届くわけがないのだが、能力を知らなければ謎であろう。 ただし、能力を明かすヒントになることはたしかだが。


「さてな……火元に心当たりは?」


 周囲を見るが、出火の原因は特定できなかった。 窓ガラスが割れて散乱しており、木造だった建物は色を黒く変えながら、一部が折れて倒れている。 特に熱を持ちそうな物がなければ、火が噴き出る仕組みもなさそうだ。


「分からん。 とりあえず、全員を集めよう。 お前も来てくれるか?」


 メリッサはうなずいた。 2人が開かずの間へと着くと、数人はすでにそこにいる。 聴くと炎の直撃前にクロードが避難をさせていたとのこと。

 メリッサは人を呼ぶクロードが到着するまでの間、避難した者の様子を伺っていく。


「君、怪我はないか?」


「……別に。 あまりむやみに話しかけないで」


「ん? そうか、すまんな」


 メリッサは彼女から距離を置く。 自分が歓迎されていないのを感じて、少しだけ悲しい気持ちになる。 彼女を、メリッサは知らない。 何か粗相をしたのかもしれないし、そうでないかもしれない。 それを確認するため、もうひとりの避難していた少女へと近づく。 もうひとりの少女については、メリッサはよく知っていた。 そのピンクの髪を揺らしながら向こうからも駆け寄ってくれるのはネーナだった。 その青い瞳で自分を追う彼女へとメリッサはたずねた。


「なぁ、あの子はなにを怒ってるんだ?」


「うーん。 もともと、愛想のいい子じゃないし。 ていうか……あれ、私には聞かないの?」


 ネーナは疑問を浮かべたように首をかしげる。 手を腰に当てて、まるで子を叱る親のように機嫌の悪そうに。 自分が心配されていないように思えて、機嫌が悪くなったのだろう。 片頬を膨らませて少し睨むようにメリッサを見ていた。


「ん? なにを……」


 言いながらメリッサ気がつく。 この状況で聞くといえば、先ほどあの女性に聴いたように怪我の心配しかないと察した。 それを伝えようとメリッサは口を止めるが、その前にネーナが言葉を挟む。


「怪我はいいかー、とかさ!!」


「あったら自分から言うだろうがよ。 お前はよ」


 メリッサ自身、心配をしていなかったわけではない。 だが、その必要がないのは見て取れた。 そのことを包み隠さず伝えると、彼女はそっぽを向いて答えて。


「ふふん。 よくわかっていらっしゃる」


 機嫌が少しは治ったのだろうか。 何故か自分と視線が合わなくなる彼女に対し、これ以上メリッサは口を挟まなかった。 余計なことを言って、また虫の居所を無くされても困る。

 とりあえず、今ここにいる人間は無事だと言うことがわかった。 ともすれば、先ほど別れたエリーや愛弟子が心配になる。 そんなメリッサの不安はすぐに解消された。 クロードが、バベルの人間のほとんどを連れてすぐに現れたからだ。 ひとりだけを除いて。


「おいメリッサ。 お前ネーナになにをした?」


 ずいずいとニールが歩み寄ってくる。 なにが不服かメリッサにはわからない。 遠慮をする関係でもないので、メリッサは真っ直ぐに聞き返す。


「いったいなんの話だ?」


「なんでよお。 なんでネーナがそんなに嬉しそうなんだよ!!」


 まるで胸ぐらでも掴まれて殴られるんじゃないかと言う勢い。 メリッサには何かした覚えがないので、訂正も否定もしようがない。 どうすればいいか。 そもそもこんなことをしている場合なのか。 メリッサが言葉を用意するのに悩んでいる間、わずか5秒ほどでそれは自然に解決した。


「うるさいよ。 ニールさん」


 ネーナがニールの首根っこを掴んだかと思うと、そのまま引きずって離れていく。 一瞬、メリッサは彼女と目があった。 彼女の目は、少しだけ潤んでいてちょっと可愛かった。


「……コヨーテがいないのか」


 瞬きをして気持ちを切り替えると、周囲にいる人間を数える。 やはり1人足りない。 となると誰がと言うことになるが、メリッサはすぐにその人物を浮かべた。 うるさくて騒々しく、賑やかな男であるため、いないことが不自然に感じる。 そのために、その男だとすぐにわかった。


「バベル周辺には見かけなかった。 誰か知るものはいないか?」


 クロードが聞くと、みんなは首を振る。 誰も知らないのか。 クロードが創作の必要があると判断したその瞬間。 エリーが小さな声で言ったのを、ネーナとニール以外が聞きとった。


「彼なら、闇ギルドのヤタガラスと一緒にいたのを見たよ」

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