表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/50

少女のお礼

「なぁ、まさか死刑ってことはないよな」


 あれから数日たった。 メリッサは、金属の牢の中で看守へと聞く。


「さあな、どうだろうな? もしかしたらそうかもしれないぞ」


「まさか。 殴っただけだぜ? いや、警察も殴ったけど……そのあと大人しく逮捕されたじゃないか」


 つい大きな声が出たのを誤魔化すように、ぶつぶつと声が小さくなっていく。 少々の焦りとそんなわけないという安心が綱引きを繰り広げながら、メリッサは看守の言葉を聞いた。


「まさかお前、知らないのかあの人を」


 看守は、メリッサが殴った男について話し出す。


「あの人はな、レベル8の魔法使いなんだよ」


 看守は、次々に言葉を続けた。

 あの男の名前は、レオナルド。 レベル8の全属性魔法をもつ。 この国で高い地位を持ち、かつて戦争で活躍し英雄視されていること。 それらを、メリッサは黙って聞いた。


「もしかして、俺ヤバイ?」


「かなりヤバイ。 ははっ、死んだら灰はもらってやるよ」


「笑えない……」


 死刑かもしれない。 メリッサは、かなりナーバスになっていた。 鉄の檻の赤い部分。 サビを爪でこすりながら、落ち着きがない様子だ。


 コツコツと、遠くの方から音がする。 等間隔で聞こえるそれは、人の足音。

 もうひとり、奥から看守が現れる。 交代の時間か、もしくは。


「メリッサだな。 ひとことで言うからちゃんと聞けよ」


 1枚の紙を持って、看守はメリッサの前に立った。 メリッサは、後退りしながら首を振る。


「まさか、嫌だ。 死刑は嫌だ。 たしかに殴ったよ。 でも、俺は悪いことしてない。 嫌だ……嫌だ」


 その言葉を聞いて、看守たちは目を見合わせる。

 紙を開いて、看守はメリッサに言いきかせるように言った。


「メリッサ。 お前を今より釈放する」


「嫌だ……え? 今なんて」


「だから、釈放だよ。 ほら、もう2度と戻ってくるなよ」


 鉄の檻は開かれて、メリッサの枷は外される。 いつまでも棒立ちのメリッサの背中を叩いて看守は檻から追い出すと扉を閉めた。


「死刑じゃないの?」


「誰がそんなことを……おまえ、イタズラはそれまでにしとけよ」


「悪い悪い。 あまりに怯えるものだから。 ホッとしたか?」


 看守はおどける。 死刑というのは、ほんの冗談だったようだ。 メリッサは一息ついてから、看守へと近寄る。


「嘘つくなんてひどいぜ。 俺は信じて怯えて……」


「お? 殴るのか? またここに逆戻りだぞ」


 看守が檻を軽く叩くと、金属音が響く。 メリッサは、拳を開いて腰へと当てる。


「……覚えておけよ」


「ははっ、本当に死刑なわけないだろ。 俺はお前がしたことの話聞いて、思わずガッツポーズしたもんね。 なぁ!」


「あぁ、まぁスカッとはしたな。 あの男、あまりいい話は聞かないし……おっと、メリッサ。 早く行けよ。 お前を待っている人が表にいるぞ」


 看守は外へと向けて親指をさす。 メリッサを待つ人。

 彼の心当たりには、ギルドの人間があった。 だが、パーティの奴らとはもう決別している。 となると、メリッサには思い当たらない。


「誰だろ。 ありがとな。 おっちゃんたち」


「おい!! お兄さんだろ」


「ふん。 嘘つきはみんなじじいだよ」


 舌を見せつけてから、メリッサは表へと出た。 そこには、猫のような耳と黒い紙をなびかせて、少女が待っていた。


「君は……なんで俺を?」


「なんでって、恩人です。 礼をしないわけにはいけませんです」


 奴隷だった獣人の少女に腕を掴まれ、引っ張られる。 メリッサは、それに抵抗した。


「待てよ。 初めから助けようとしたわけじゃない。 俺は、誰かに背中を押されて……だから、たまたまなんだ」


 本当に押されたから定かではない。 だが、状況を思い出すと、自分から前に出たとはメリッサ自身、そう思えなかった。


「そんなことないですよ。 だってあなたは、誰にも押されてなんかない。 自分で前に出ようとして転んでたんです」


 だから、その言葉を聞いてメリッサは、胸が熱くなった。 たしかに、押されたような感触はなかった。 でも、自分は恐怖で動かないでいると思っていたから。


「さあ、お礼をさせてくれますね?」


 メリッサは彼女に連れられて、街へと繰り出した。 今度は抵抗をしない。 メリッサは、少しうきうきしながら彼女についていく。

次元収納

  10人に1人くらいは持ってる普遍的なスキル。 ただしレベルが多くて3程度の人ばかりで、5をこえるとほかに優秀なところがなくてもパーティに誘われることが多い。 レベルが上がるにつれて、全体の収納量、1度に収納できる量、種類、あるいは召喚できる量が変わる。 

  レベル10にもなれば、基本的に生物以外ならなんでも収納できる。 そのためメリッサは相手の魔法を直接収納することで、カウンターを行った。 ちなみに城は中に生物さえいなければ可能だが、ネズミ1匹いない城などあるのだろうか……

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ