スラム街
メリッサがバベルのみんなに宣言した翌日のこと。 彼はその近辺を歩いていた。 そこは旧市街地であり、人気はない。 元々スラム街として成り立っていたが、今では住んでいる人も限られる。 かつてはそこに住んでいたメリッサも、懐かしさと悲しさを感じていた。
「変わってるところと……変わらないところ。 こんなに土地を無駄にしやがって、俺が有効活用してやらんとな」
瓦礫の山に向かってぶつぶつと声かけをしていると、メリッサの耳に音が入ってくる。 怒声と衝撃。 それらをメリッサは、喧嘩の音だと判断した。 そう遠くはないが、やや広範囲。 野次馬なメリッサは、当然音を追っていく。
後に近づくにつれ、血の匂いが立ち込めてくる。 少し進めば倒れる男たち。 肉の弾ける音、近い。
「なんだ、もう終わりかよ。 もっと感情見せろバカやろう」
まるで周囲を震わせるかのような声。 その声の持ち主が、たくさんの男たちに囲まれている。 それを物ともせず、ひとりひとりの意識を確実に奪っていく。 だが、無謀だった。 男は後ろから武器を振るわれそうになった。 それに、メリッサだけが気がつく。
「後ろがお留守だぞ」
「あぁっ!? ……てめえは」
メリッサが武器を奪うと、足元を払う。 それに男が追撃を加え、背中合わせになる。
「よう。 あの中にいたよな……メリッサだ」
「……正直、加勢は助かる。 コヨーテだ、お見知り置きを」
2人が背中越しに挨拶をしあうと、彼らの敵がこちらからジリジリと距離を離していく。 くそっ、仲間がいたのか。 そう口からこぼしながら、撤退をはじめていった。
「まだ油断すんなよ。 ここの奴らは甘くねえぜ」
「あぁ、知ってる」
メリッサの言葉はどこか嬉しそうだった。 見た目は変わっても、この街に変わらない何かを見つけることが出来た。 それを聞いたコヨーテは振り返った。
「あぁ?」
「よく知ってる……だけど、もういいと思うぜ」
唸るようなコヨーテの声に怯まず、静かにメリッサが言う。 周囲から人のの気配が消えていて、もう待ち伏せも追撃もないことが、彼には分かっていた。 それを聞いたコヨーテが、全身の力をだらりと抜いて適当に瓦礫に座り込む。
「そうか? なら本題に入るか。 ズバリ、俺を追ってきたんだろう」
「いや、たまたまだ」
2人の距離が近づく。 メリッサは肩に腕をまわされ、かなり嫌そうにした。
「照れんなって、2番目に俺を選ぶなんて目が高いんじゃねえの」
「2番目でもないしな」
「ていうと……あぁ、ネーナかニールの野郎か。 なら、4番目……テンション下がるぜおい」
「勝手に決めつけるなよ。 お前が初めてだ。 選んだわけでもない」
肩を深く落として、コヨーテはため息をついた。 それをメリッサは冷ややかに対応していく。
「1番目? そうか、あの面倒なのをかき分けて1番。 くぅー、兄さん分かってんな」
1番目と伝えたのは間違いだったとメリッサは後悔しながら、先ほどから何度か登場していた単語へと食いかかっていく。
「面倒なのって?」
「いや、気にしなさんな。 で、どうする。 とりあえず、お互いのことをよく知らねえとな」
誤魔化すためか、彼はメリッサの背を押しながら強引に街の奥へと誘っていった。
コヨーテ
金髪長身の無駄デカピアス男。 この世界ではテンションが高いやつはいい人である事が多いのでおそらくいい人。 チャラい見た目だがタバコはやらない。 酒は飲む。 ただし強くないのですぐに吐いてる気がする。




