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落ちぶれた男

 メリッサが歩いていると、ふと人が妙に集まっているのが目に入る。 ガヤガヤと、まるで火事を見る野次馬のように集団が騒いでいる。


「なんだろ……? どうせ暇だし、付き合ってみるか」


 メリッサは人をかき分けて集いの中心へとわきでる。 そこには目を疑うようなことが行われていた。


「……ひどいな」


 メリッサがつい呟く。 そこにはボロい布切れを身につけ、地面に横たわる獣人の少女がいた。 その前に立つのは、少女とは対照に高そうな着物に身を包む男。 少女には、首輪がついていることがチラチラとメリッサには確認できた。


「やはり獣人は使えませんな。 さっさと処分するに限る」


 少女の頭を踏みつけると、男は人差し指を少女に向けて突き出す。 その先には小さな火の玉。 魔法だ。 本来モンスターを殺す魔法を、男は自分の奴隷に向けているのだ。


 おいおい。 だれか止めろよ。 あんな女の子が殺されそうなんだよ。


 そう思いながら、メリッサはキョロキョロと辺りを見渡す。 だが、だれ1人として動こうとはしない。 当然だ。 もしかしたら自分まで被害を被るかもしれない。


 なんでだよ。 メリッサが心の中で何度も叫ぶ。 なんで誰もと思いながら、ふと自分の身体が前へと投げ出された。 彼は何者かに押されたかと思い、後ろを振り向く。 だがだれとも視線が合わない。 みんな、メリッサと視線をそらす。


「なんだ貴様。 まさか人の奴隷を助けよう……なんて考えてないよな?」


 メリッサの表情から、血の気がひいていく。 唇は青くなり、引きつっていく。


「え? そんな、こと……」


 すぐに否定して、謝る。 許してもらって集団へと戻ろう。 そんなことを考えていた。 だがメリッサの言葉を、少女の涙が止めた。


 そうか。 誰かじゃないや。 俺がいる。 残念だけど、俺しかいない。


 自信があるわけじゃない。 戦いは専門外。 いつも荷物をしまって、取り出すときだけ感謝の言葉を受ける。 それ以外は、そこらの雑魚と同じくような扱い。


 だけど、そんな負け犬のような自分と、お別れをする。


 メリッサは立ち上がった。 立ち上がり、歩いて、少女の前に立つ。 このムカつくじじいを、強く睨む。


「ムカつくんだよ。 お前みたいな、喧嘩が強いだけで弱い奴を虐げる奴は」


「ほほう。 まだこの私に意見する者がいたとは。 いやはや、見どころのある少年だ」


 一瞬だけ、メリッサは期待した。 もしかしたら、このまま見逃してもらえるかも。

 そんな甘い考えが続くのは、本当に一瞬だけの話。

 男の指先の火の玉がどんどんと大きくなる。 指先は男の頭の上に掲げられ、太陽と重なるようにこちらを見下ろす。


「もう少しだけ賢ければ使えるのですが、残念。 ゴミですな。 しかしこれはいい。 ゴミがまとめて処分できる」


 後悔。 ただ後悔した。 なんで俺がこんなめに。 そもそも、今日はもう不幸にあったじゃないか。 泣きっ面に蜂ってことか? そう考えていられるのも一瞬だった。


 メリッサは、逃げることすら忘れて立ち尽くす。 どの道、逃げられない。 今になって、責任の所在を探す。 

 俺がこんなことになったのは、だれのせいだろう。 少女か? 俺か? いや、俺を押したのは誰だ。


「覚悟はいいですかな?」


 男の無情なその声とともに、大きな大きな火球が、揺らめきながら落ちてくる。 メリッサへ、ゆっくりと。

 メリッサは考える。 誰のせいでもないことに気がつく。 彼は少女を庇うように、両手を横へと伸ばした。


「違う。 悪いのは全部お前だよ。 俺は絶対、お前を許さないからな」


 メリッサの叫びとともに、炎が彼の身体に触れる。 男は笑い。 民衆は目を背ける。 少女が涙とともに目をつむる。 メリッサは、歯を食いしばり耐える。 痛みが現れる前に、怖くなり目をそらす。


 メリッサは、思った。 いつ、炎は俺に到達するか。 炎の速度としては、もう俺は死んでいてもおかしくない。 だが、まだ死ぬどころか傷ひとつ付いていない。


「あれ、なんだ。 どういうことだ……無傷?」


 メリッサが目を見開くと、炎は消えて無くなっていた。 狙いが逸れたのかと、他所を見ても損傷する場所もなく。 まさかハッタリかと思えば男はうろたえている。


「どうしてだ。 いったい、なぜ消えたのだろう」


 その言葉はとても嘘をついているようではなく、何より嘘をつく必要はない。

 とりあえず、ひとつの危機は乗り越えた。 メリッサがホッと一息をついたその瞬間、再び炎が現れる。


「仕方あるまい。 幸運が続かぬよう、もう一度だけ披露させてもらおう」


 男は再び、炎を放った。

レオナルド 【えたーなるロリコン】

  おおよそ40代かその前後のおっさん。 昔は凄かったらしく大金持ちだが、獣人の少女を見つけ、金に物を言わせて手に入れるほどのロリコン。 なのに結局街中で処分とは…… 風の噂では、家にも大量のロリが生息するらしい独身。 そりゃあ、恋愛対象がそこだとねぇ。 ちなみに国で最強クラスの実力者だ。

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