アルカディア
「どうしたこれはいったい。 おや、メリッサか」
聴き慣れた声に振り向くと、そこにレオナルドがいた……昨日の少女とともに。
「おじさん、ここは?」
「いけない……君は下がっていなさい」
少女がレオナルドの背から顔を出そうとするが、即座に彼が顔を覆う。 ゆっくりと振り返らせると、物陰へといくように誘導した。
「どうやら事情を聞かないといけないのはお前だけじゃなさそうだな。 どうした? 怒られたいかレオナルド」
先ほどのシリアスな雰囲気が一変。 メリッサは拳を鳴らしながらレオナルドへと詰め寄った。
「まてまて、これには深いわけがある」
「深い? 不快の間違えだろう」
「はっはっは。 うまいね……だめかな?」
こつりとデコに拳が優しく当たる。 ため息をひとつついてから、メリッサは指を空で横へと滑らした。
「帰るぞ。 そこのお前、手柄はやるから事情を説明しておいてくれ」
「……いいのかい? こいつの賞金はバカにならないよ」
下へと向けた視線をレオナルドに向けると、メリッサは呟くように言った。 その言い方は呆れたかのような、面倒なような様子だ。
「所詮、はした金だ。 今後を考えればな」
特に止められることもなく、その場から去ることができた。 メリッサはともかく、レオナルドの顔は広く割れている。 後日警察が家へとくることは避けられないだろう。 だが、それよりも先に行動し始めなければならないことがあった。
家につき部屋に入ると、人払いをする。 部屋内には2人、メリッサとレオナルド。 使用人はあの少女と別室にて待機してもらった。
2人は、簡潔に事情の共有をする。
レオナルドと共にいた少女。 彼女は、ルナという。 親がいなく盗みでなんとか生きていたところを保護したらしい。 メリッサはとりあえず納得しておいた。
「さて、アルカディアとは……どうするつもりだ」
沈黙の中、先に言葉を出したのはレオナルドだった。 重く苦しい雰囲気ではあったが、いつまでも黙っていては進まない。
「初めて見たな、飛空挺。 あれは人様の国の上を勝手に飛んでいいものなのか?」
「領空か……普通はダメだがな。 この国に限ってはその限りではないよ」
メリッサは怪訝な顔で足を組み替える。 コツコツと指で机を叩く音が、だんだんと増していく。
「うちだけ特別扱いかよ。 列強は違うな」
「そうじゃない。 知らないのかーーこの国では飛空挺は飛ばない」
レオナルドは簡単に説明してくれた。 魔石で飛ぶ飛空挺は、他の力の影響を受けやすい。 他に大きな魔石があるところでは食べないそうだ。 アズガルドの中心には大きな魔石がある上、砂漠にはまだ採掘されたいない魔石が眠る。 この周辺では本来、飛空挺など飛べないはずなのだ。
「そうか……だが今は何故飛べるのかは重要じゃない。 奴らをどうするか考えなければな」
メリッサは茶を飲み干すと立ち上がる。 壁にかけてある地図を指差して唸るように考え込む。
「……何度か考えたのだが、メリッサ。 それは私たちの仕事ではないんじゃないかな。 国同士のことだ」
レオナルドの言葉にメリッサの行動が止まる。 メリッサは、その言葉を予想をしていなかったのか、意外そうな顔のまま腕をだらりと落とした。
「お前が……いや、英雄といっても過去の話か。 そうだよ、別に俺たちがやる必要はない。 だが、俺はあの時止めることができたのに、止められなかった。 それは俺の責任だろう」
少しだけ、レオナルドが悲しそうな顔をする。 メリッサと目が合うと、すぐに表情を戻した。
「確かに、英雄だったのは過去の話だ。 だが、君がそこまで本気なら力を貸そう……どこから手をつける?」
レオナルドが協力を約束してくれる。 だからメリッサは、少しだけ笑った。 安心をした。
アルカディア
アズガルドの西に位置する王国。 雪国であり攻め込まれることに対してめっぽう強い地形を持つ。 アズガルドを挟む2つの大国のうちのひとつで、もうひとつの国と緊張状態が続く。 間に立つアズガルドを是が非でもとりたいとからだろうが。




