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ボランティア

 ーー結局、折れたのはレオナルドだった。 理由は簡単だ。 メリッサがレオナルドに対して、報酬を用意したからだ。


「お前が求める物を用意してやるよ」


 と言っても、相手は英雄とまで呼ばれた男。 レオナルドに対して、何を用意すればいいのかメリッサはまだ探る段階。

 まず人の欲求の動物的なところから考える。 飯、寝床、性。 レオナルドなら迷うことなく性だろう。 メリッサ自身も性で落ちる。 いやメリッサなら、どれでも落とせるであろう。


「君が私にか? ふっ、失礼。 メリッサ、君には無理だよ。 私には求めるものなどない。 なぜなら、なんだって持っているからね」


 メリッサは考えた。 レオナルドはロリコンである。 だが、周囲にロリータはかなりいる。 これではダメだ。

 いやまて、おかしなことがなかっただろうか。

 メリッサは知っている。 この男が、矛盾した感情を持っていたことに。 その場面に、メリッサは立ち会っていた。


「いやまだだ。 お前はまだ、手に入れていないものがある」


 メリッサは確信する。 これならばこの男は落とせると、これならばこの男は折れてくれると。


「何だねそれは。 言ってくれ」


「リリィだ。 お前はリリィを手に入れていない」


 メリッサが初めてこの男と出会った時、レオナルドはリリィを処分しようとしていた。 その時に確かに言っていたのだ。 やはり獣人は使えないと。


 これまでの会話から、レオナルドは獣人に対して異常なまでに嫌悪感を持っている。 そのレオナルドが、リリィを一度自分のものにした。


 妙だ。 リリィがロリだからか。 だとしても、最終的に殺そうとまで思うほどの嫌悪。 何かあるに違いない。


 メリッサはハッタリが見抜かれないように、しっかりと言い切る。


「……あの、私の話です?」


 ただ誤算だったのは、リリィがちょうど起きてきて、この話に乱入してきたことだった。


 結局、事情を聞く前にレオナルドが折れた。 リリィについて、その事情を詮索されたくなかったのだろう。 メリッサも、わざわざ人が触れたくないようなことに、ズカズカするつもりはない。


 今は街の中、レオナルドがしっかりと人助けをすることができるか、リリィと共に後をつけていくだけである。


「……あの、結局私には意味がわからなかったですけど」


「気にするな。 お前の貞操は大丈夫そうだ」


 メリッサが適当な理由を言って、リリィの肩に手を置く。 誤魔化せるか少しだけ不安だが、今はレオナルドからは目が離せない。


「分かったです。 とりあえず、デートみたいで楽しいですね」


 何故だろうか。 誤魔化すことができた……ということにしておこう。 メリッサたちは、そこの店で買った飲み物をすすりながら、物陰から物陰へと移っていく。


 レオナルドはというと、人に話しかけては頭を下げるを繰り返している。 彼なりに、まじめにボランティアというのを実行しているのだろう。 と、メリッサが油断した時だった。


 先ほどから、特に何か進展があったわけではなかった。 それはそうだ。 いきなり何か困っていることはないかと道を歩いている時に聞かれる。 それも評判の悪い男であり、かつて英雄と呼ばれた無駄に地位の高い男にだ。 困っていることなどそうそうないだろうし、あったとしても言えるものか。

 大体の人間は、お前に話しかけられたことに困っているとしか言いようがない。 おそらく、そう言われて内心イライラしながら、レオナルドは頭を下げているんじゃないかとメリッサは思った。 事実は、丁寧に相手をされているだけだが。


 問題はというと、ついにやつは手を出したのだ。 歳はないかない少女を見つけたと思うと、レオナルドはあろうことか声をかけてしまったのだ。 たしかに、他の大人たちはレオナルドに対して、困ったことに困りごとを明かさない。 ならばまだ聞いていてない人に確認して回るしかない。 それは間違いない。


 だがレオナルド、お前が幼女に話しかけてはいけないだろう。 メリッサは、慌てて彼のもとに行こうとする。 それを止めたのは、また幼女だった。


「メリッサさま。 私、あっちのケーキ食べてみたいです」


 リリィが指差す方向には、小洒落たカフェ的ななにか。 無邪気な表情で、リリィはメリッサを引っ張る。


 あまり時間はない。 メリッサは考える。 見知らぬ幼女を助け、知り合いが犯罪やナニを犯すのを未然に防ぐか。 あるいは、リリィのためにケーキを食べにいくか。


 考えて、考え、考えた結果。 ケーキが食べたかった。

ボランティア

  一定以下の報酬の場合、本部を介さずにクエストを依頼できる。 その場合をボランティアと呼ぶ。 規定はかなり低い額のため、基本的に無料なことが多い。 ただし、厄介な手続きがないうえ評判も上がるので、大きなギルドは積極的にボランティアを行うことが多い。 個人でボランティアに勤しむのは聞いたことがないので、個人で行うのは多分レオナルドが初めて。

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