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いらないからと追い出され

 メリッサは説教なんか嫌いだ。 どうせその長い話を聞いたところで、自分が変わることもなければ、周りが違って見えることなんてない。


 そんな考えだから、重要な一言だけを聞き取って焦ることになる。


「ーーだから、メリッサ。 お前なんかいらないんだよ」


 メリッサは、彼の言葉の前後を聞き取ることができなかった。 なにを言われたか分かってる。 だが、なぜ言われたのか分からず目をパチクリとさせた。 彼は一呼吸置いてから落ち着いて、今起きたことを思い出していく。


 パーティのリーダーに呼び出された。 そこに、知らない女の子がいる。 その子も、自分と同じ役割を持っていた。


 メリッサの役割は、いわゆる倉庫役。 ストレージ能力を持っていて、いろいろなものを別次元に収納することができるのだ。


 この世界では、スキルと呼ばれるものがある。 人によって、得意なものから苦手なものまである。 メリッサは、次元収納のレベル9。 大抵のものならその場で収納でき、どこでもそれを取り出すことが可能だ。


 スキルのレベルは10まである。 レベル10にもなると、神の領域と言われる。 メリッサの収納能力はかなり高い。 レベルだけで言えば誰もが羨み欲しがるほど。 それだから、まさか不要扱いされるなどと思いもしていない。


「ジョー。 冗談だろ……そんなこと、嘘だ。 そうなんだろ?」


 だが、それは戦闘に適していたり、周りに良い影響を及ぼすものに限るとも、メリッサは理解している。 


 レベル9の次元収納など、高いのはレベルだけでその性能は過剰なだけ。 その気になれば、城ひとつ分がまるごと収納できたとして、いつ使うのか。


 メリッサは、声を震わせた。 たしかに自分が不要になる可能性はあった。 リーダーのランクはB。 それに引きかえ、自分のランクは未だにD。 戦闘に直接関わらないので無理もないが、最低のEよりひとつ上でしかない。


「わかるだろ? 同じくらいの力を発揮できるなら、野郎よりかわいこちゃんの方が俺はいいなぁ」


「お前っ。 お前は……」


 メリッサがジョーの胸ぐらを掴んだのは、無意識だった。 メリッサの非力からかその腕は簡単に振り解かれる。 静かな空間で、2人は睨み合う。


「やめておけよ。 お前じゃ俺には勝てないだろ」


「俺が、今までどれだけやってきたと思ってる」


「分かってる。 お前はよくやってくれたよ。 でもそれはお前じゃなくてもいい。 お前よりもいい子がいた」


 メリッサはその言葉から、ふと倉庫の女をみた。 メリッサのその視線は、とても暗く深い。 涙を浮かべていたが、悔しさからその滴をこぼすことを我慢していた。


「仕方がない。 君、預かってるアイテムを渡すよ。 手を貸して」


 メリッサは、倉庫番の女へ手を伸ばす。 2人の手が触れると、ストレージの中にある希少なアイテムが次々に女の子へと送られていった。


「話が早いな。 物わかりが良くて助かるよ」


「お前の声なんか、もう聴くに耐えないからな」


「はははっ、俺もだよ。 嬉しいな。 あと出来れば、ギルドも抜けてくないか? 俺は声だけじゃなく、顔を見ることさえ耐えがたい」


 ギルドとは、集団が募り国や個人からの依頼クエストをこなす制度。 それを抜けるということは、安定した収入から離れる。 特にメリッサにとっては。


「それは俺の勝手だろう。 どれだけ俺が嫌いなんだよ」


「……当然だろう。 お前なんか」


 ジョーは、メリッサの言葉に不自然にイラついてみせた。 机の足を蹴ったかと思うと、よそを向きメリッサに顔を見せない。

 メリッサは、パーティの証である腕章を投げつけると、それはジョーの後頭部に当たる。 彼が振り向き怒る前に、メリッサは部屋を出た。


「お前は強いし優秀なんだろうけどな。 お前なんかよりももっといい奴らはいるさ」


 乱暴に閉められたドアへと呟くと、メリッサは人が行き来する往来を歩いていった。


「それにしても、これで俺が抜けてハーレムか……羨ましい」


 パーティは4人構成。 メリッサが抜けてジョー以外全員が女性になった。 そのことを羨むように顎に手をあてながら口からこぼした。

メリッサ 【クールに見えて意外に涙もろい】

  この作品の主人公で、所持スキルは次元収納のみの一点豪華主義者。 髪の毛がやや伸び気味で服も着崩していることがおおく、だらしない印象を見せる。 とりあえず高レベルのスキルが欲しいと動くが適正が上記しかなく、仕方ないからと倉庫役を行なっていたが、今回で見事追い出された。

  戦闘でも役に立つことは多かったので、おそらくなにかの思惑がリーダーにはあったのだろうが、この時のメリッサはまだ、何も知らない。

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