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闘技大会 勝ち上がる者達

 闘技大会3日目、2回戦が行われている。

 第1試合に出場した風の都市の冒険者、ネクロマンサーのゼロは貴族の執事というこれまた異色の出場者と戦い、激闘の末に勝利していた。

 イザベラも王都の衛士大隊長を相手にして、これまた一撃で勝負を決めている。

 イザベラのサポートには同じ聖騎士のヘルムントがついているが、1回戦、2回戦共にヘルムントは立っていただけで何もしておらず、イザベラの独壇場だった。


 そして、グレイの試合は最終戦だ。

 闘技場に立つグレイの向かい側には女性騎士がハルバートを手に立っている。

 とある有力貴族の騎士隊に所属する騎士のようで、サポートは弩を装備した狙撃兵、こちらも若い女性だ。

 口上によれば2人は貴族の令嬢の護衛騎士らしい。


「試合開始です!」

  

 獣人の娘の試合開始の合図と共に騎士が動いた。

 ハルバートを構えてグレイに向かって一直線に駆ける。

 1回戦のグレイのように速攻に出たように見せかけて、グレイの目前でハルバートを支えにして直上に飛び上がった。

 開いた射線の先から弩が放たれるが、自分が取ったものと同じような策に嵌まる程グレイは間抜けではないし、その機会を見逃す程エミリアも愚かではない。

 エミリアは飛び上がった騎士に狙いをつけて矢を放ち、グレイは襲い掛かる矢を槍の柄で払いながら槍を突き上げた。


 騎士は空中でエミリアの矢を払い、身体に回転を加えてグレイ目掛けてハルバートを振り下ろす。

 グレイの槍と騎士のハルバートが激突する。

 落下と身体の回転の力を加えたハルバートは槍に打ち負けるようなことはなく、グレイの槍を弾き飛ばす。

 この一撃が決着の決め手となった。


 槍を弾かれたグレイは即座に姿勢を落とし、騎士が着地するのを狙って払い足を繰り出した。

 あわや、騎士は転倒は免れたものの、剣を抜いたグレイの斬撃が追い打ちをかける。

 一撃、二撃と辛うじてグレイの攻撃を捌くが、バランスを失ったままの姿勢を立て直す暇もなく、グレイの当て身を受けて尻餅をついてしまう。

 騎士を援護しようと弩を放つ狙撃兵だが、その矢を篭手で弾いたグレイは尻餅をついている騎士の喉元に切っ先を向けた。


「降参です・・・」


 敗北を宣言する騎士、決着の瞬間だった。

 グレイは2回戦を勝ち抜いたが、聖監察兵団の出場者が2回戦を突破したのは初めてのことだった。


 そして3回戦が行われる大会4日目、第1試合のゼロは魔導院の魔導師であり魔法部隊の隊長とのアンデッド対ゴーレムの集団戦闘を制して勝ち上がったが、勝利を決めたのは前代未聞のサポートの魔導師による一撃だった。

 第2試合では森の都市の冒険者、オックスとリリスが勝利し、第3試合では大方の予想どおり、イザベラが快勝した。

 そして、第4試合、グレイは王国軍第2軍団の重攻撃中隊長との戦いに挑んだ。

 

 戦斧を持ち、筋骨隆々のオークのような体躯を持つ重戦士に対してグレイは真っ向勝負を仕掛けた。

 激しい打ち合いにエミリアも重戦士のサポートの魔術師も援護する隙が見いだせない。

 神官戦士と重戦士、2人の激しい激突に会場の興奮も最高潮に達したとき、グレイの渾身の突きが重戦士の胸を捉えた。

 魔導具の破壊音と共に吹き飛ばされる重戦士。


 戦いに勝利したグレイは溢れんばかりの歓声に包まれた。


 大会4日目が終わり、準決勝に勝ち進んだ4強が出揃った。

 明日の準決勝、第1試合は風の都市の冒険者、ネクロマンサーのゼロと魔導師レナのペアと森の都市の冒険者、ドワーフの重戦士のオックスとエルフの弓士リリスの対決。

 第2試合は聖務院聖騎士団の聖騎士イザベラとヘルムントに対して聖務院聖監察兵団の神官戦士のグレイとエミリア。

 奇しくも第1試合は冒険者同士、第2試合は聖務院代表同士の対決となった。


「隊長、ここまで来ましたね。あの聖騎士と対決ですよ」


 控え室に戻ったグレイにエミリアが声を掛ける。


「・・・・・」

「隊長?」


 声を掛けられたグレイだが、厳しい表情で無言のままだった。

 イザベラとの対決、勝てる見込みなど微塵もないが、それでもグレイは諦めていない。

 絶望的な実力差の中にあっても勝利するため道を模索して最善を尽くそうとしていた。

 それがグレイの戦士としての矜持だった。

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