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森の都市

 グレイ分隊は直ちに準備を済ませて森の都市に向けて出発した。

 5人は聖監察兵団の制服姿でなく平服で旅人や冒険者を装う。

 制服や軽鎧、ハルバート等の装備品は目立つので郵便馬車にて森の都市のトルシア教の教会に運び込まれる手筈になっている。

 聖監察兵団の部隊が都市に入ったことを邪教団に悟られないためだ。

 

 森の都市はその名のとおり周囲に緑豊かな森が広がっていた。

 都市の中にも木々が豊富にあり、都市の中に森がある、というより森と都市が同化しているようだ。

 そんな森の都市に入る際、グレイ達は分散して個別に都市に入り、事前に打ち合わせしたとおり、グレイは衛士隊詰所、フリッツは冒険者ギルド、他の3人は教会に直行して協力を要請する。


 グレイは森の都市の衛士隊詰所で衛士隊長に面会した。


「聖務院からの極秘情報は受け取っている。私としても件の悪魔信仰教団には頭を悩ませていたところだ」


 中年の衛士隊長は現状を説明する。


「奴等は信仰の自由を盾に布教活動を行っているが、大半は市民を騙してお布施と称した金品の詐取を行っている。我々も警戒しているが証拠を掴むことができないでいる」


 悔しそうな衛士隊長にグレイは幾つか確認する。


「本件に我々聖監察兵団が介入することを知っている者は?」

「聖務院からも特別に指示されているから今のところ私だけだ」

「奴等は既に生け贄の娘を誘拐しているようですが、目星はついていますか?」

「いや、都市内で行方不明になった娘の情報はない。もしそれが事実ならば旅人か他の村から誘拐してきたのかもしれん。奴等の本拠地は監視しているが、手がかりはない」


 それを聞いたグレイは暫し考え込む。


「分かりました。儀式は次の新月の夜です。それまでの調査は我々が行います。奴等に気取られると元も子もないのでギリギリまで隊員にも極秘としてください。一斉突入には衛士隊の協力が必要不可欠です。20名程の突入隊員を選抜しておいてください」


 グレイの依頼を衛士隊長は快く承諾した。


 分隊は作戦決行の日まで拠点となる冒険者ギルドの宿舎に集結して情報を集約した。

 結果、邪教団の規模は把握されているだけで34人、誘拐された娘の監禁場所は不明とのことだ。


「情報が少な過ぎるな。そうなると対象の規模は多く見積もって40から50として対応しよう。衛士隊から20人の応援を貰うが、冒険者ギルドからも10人程度の応援が欲しいところだな」


 グレイが腕を組みながらフリッツを見た。


「ギルドには協力要請はしてありますが、未だ極秘事項なので応援の規模は確定しません。ただ、その件で信頼の置ける冒険者が協力してくれるそうです。間もなくここに来る頃です」


 フリッツが報告を終えた直後、宿舎の廊下をドカドカと近づいてくる足音に続き扉を打ち破るのではないかという勢いのノックと共に2人の冒険者が入ってきた。


「邪魔するぞ!ギルドからの極秘依頼を受けてあんたらの協力をしに来た!」


 大声で話しておいて極秘もなにもないものだ。

 部屋に入ってきたのは屈強なドワーフの男と長身のエルフの女性の2人組だった。

 首に下げた認識票は銀色、上位冒険者だ。


「森の都市の冒険者のオックス・ガンツだ。こっちは相棒のリリス・エイリア。ちったあ名の知れた冒険者だ。あんたらに協力させてもらう」


 本来はあまり仲の良くない種族であるドワーフとエルフのペアだが、グレイは特に気にした様子はない。


「ん?初対面の奴は俺達2人組をみると不思議そうな顔をするもんだが、お前は違うな?」


 表情を変えないグレイにオックスと名乗ったドワーフは興味を持ったようだ。


「2人共に銀等級の冒険者です。貴方達にとっては種族間の軋轢なんか些細なことなのでしょう」


 グレイの言葉を聞いたオックスとリリスは互いに顔を見合わせて笑い出した。


「気に入ったぞ!聖務院のお堅い役人の手伝いをさせられると思っとったが、あんたらとならいい仕事が出来そうだ!」

「そうね、元々は森の都市内での問題で、そんなことは野放しにしたくないから、最大限協力するわ」


 グレイはオックス達に現在の状況と儀式の当日までは表立って行動はせず、情報の収集に徹することを説明し、ギリギリまで情報管理を徹底することを依頼した。


「強行突入の際に冒険者ギルドからも10人程度の応援が欲しいのですが、可能ですか?」


 グレイの問いにオックスは力強く頷いた。


「任せておけ!俺とリリスの他に適当な奴等を見繕ってきてやる。何かリクエストはあるか?」

「そうですね、見たところエイリアさんは弓士のようですが、他に弓を扱える者を3人程、乱戦になることが予想されますので魔法戦力はいりません。他はガンツさんの他に剣等の近接戦闘が可能な者を選抜してください」

「任せろ。信頼が置けて腕の立つ奴等を連れてきてやる。それからな、俺達のことはオックス、リリスと呼んでくれて構わんぞ。ガンツだのエイリアだのと呼ばれると慣れなくて誰のことを呼んでいるのか分からなくなるからな!」


 豪快に笑うオックスにグレイは好感を持った。

 少なくとも先の衛士隊長と、この2人は信用してよさそうだ。


 オックス達が退出した後でグレイは突入作戦の計画を立て、衛士隊長とオックスに決行の前日までは選抜される人員にも情報を秘匿しておくことを依頼し、分隊はそれまでに様々な情報収集をすることにした。

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