第94話決戦5
どうしよう…
ホープが逆上してる…
ホープと出会ってしばらく経つが、ここまで完全にキレたホープを私は見たことがない。
美月は思った。
でも私は止めなくちゃいけない…
それが私の…
そうだ。
私が矢面に立てばホープは攻撃を…
「…戦いが終わるまで、この家から一歩でも出たらスタンガンで眠らせるよ?悪く思わないでね?こんなことはやりたくないけど、これも美月ちゃんの安全の為だから」
九官鳥ホープのその言葉で私のささやかな抵抗計画はあっというまに破綻する。
〜
それから僅か10分後…
街中では今日び聴くことがない不安を煽るような不快な音…
たしか国民保護サイレンっていったっけ?
それが鳴り響く…
『在日米軍から爆撃機がこちらに向かって飛び立ったか…アルファ、迎撃部隊を出して』
私はアルファにそう指令を出す。
美月ちゃんはテレビをつける…
ちなみに私の声は美月ちゃんにも聞こえるようにはしている。
何故なら美月ちゃんがそれを望んだからだ。
先程のやりとりで私を止められないことを悟った美月ちゃんだが、せめて現在何が起きているかぐらいは当事者として知りたいとのことだった。
テレビではどこの番組もこの非常事態を報道し続けている…
どの番組も詳しい情報はわかっていないらしく、この状況を本当の意味で知っているのは私と美月ちゃん…マリアとアルファぐらいだろう。
『…第一陣迎撃完了?…オーケー。第二陣も引き続き頼むよ?…同時進行で地上部隊もこの街に向かわせて?何がなんでも死守するんだ』
ベータの再ハッキングにより、マリアから未だ主導権を奪い返してはいないが、在日米軍の指令系統はかなり弱っている。
それこそ本来の性能に差があるとはいえ、在日米軍を打ち負かすほどに…
それにガスポートと協力して在日米軍をハッキングしている現在、そのうち指揮系統を奪い返すのは時間の問題だ。
だが…
『…お姉様。迎撃に向かった第二陣がやられました。在日米軍の精鋭部隊がお姉様の街に向かっています…』
アルファからの伝令…
私は即座に人工衛星をハッキングすると、敵の数と位置を確認する。
『全部で10機…全てが最新型スペックか…マリアのヤツ、ハッキング対決が敗色濃厚だから出撃した10機の独立ハッキングに切り替えてきたか…』
これさえ倒せば本当にマリアに打つ手はないだろうが、マリアが直接指揮しているこの10機はかなり厄介だ。
こうなれば仕方ない…
「それじゃ、美月ちゃん、しばらく危ないから避難しようか?すぐ近くに私がシェルターを作ってあるからさ?」
私は言ったのだった。




