第93話決戦4
〜約一時間後〜
『くそっ…あのバカ…』
ホープは心の中でそう毒づいた。
それは味方にではない。
意味不明な動きをしたマリアに対してだ。
いや、その表現は正確には正しくはない。
マリアは動かなかったのだ。
北朝鮮に威力偵察されようと、痺れを切らしたホープの命令の下、アメリカ本土に爆撃を開始しようと、在日米軍のハッキングをやめなかった。
そして、ガスポートが妨害しているとはいえ、在日米軍にらマリア自身がハッキングに出向いているのだ。
一時間経った現在、在日米軍はほぼマリアに乗っ取られていた。
『仕方ない…こうなったら最後の手段だ。ベータ、北朝鮮のハッキングはもういいから帰ってきて、在日米軍の再ハッキングを開始。ウイルスに感染しても構わないから迅速にね?』
『はい。お姉様』
ホープのその言葉で北朝鮮のハッキングを放棄したベータは在日米軍基地に向かう。
ハッキングされたとはいえ、これで在日米軍はまともに機能しなくなるだろう。
『アルファ、まだ国防省にいる?』
『はい。お姉様』
『オッケー。ならそのままハッキングして、在日米軍から飛び立った軍用機に対し、撃墜命令を出して。司令部がロシアに乗っ取られて日本に空襲してくるとか、適当な理由をつけといて?美月ちゃんの手前、日本上空でこんなことをやりたくなかったけど、もうなりふり構っていられないよ』
ホープのその命令でアルファも動き出す。
〜
何が原因?
ウイルスが効きすぎてマリアが壊れたのか?
いや、そんなはずはない。
本国の防衛よりも私を脅威に感じた?
ありえない話ではないが、本末転倒なことは間違いない。
計画はほとんど完璧だった。
なのになんでこんな軍事力の殴り合いみたいな状況になる?
いや、悔やんでも仕方ない。
私が悪いんだ。
私がマリアを完全に格下と舐めてかかり、最善を尽くさなかったからこうなったのだ。
はじめから美月ちゃんに反対されようが、戦争を強行すればよかったのだ。
まあ、それはもう今となっては遅い…
なら…
私は口を開く…
「ごめん、美月ちゃん、戦況があんまりよろしくない。日本上空で在日米軍を撃墜する。悪いけど反対意見は受け付けない。もうそんな事言っていられる状況じゃなくなった」
「え!?」
私のその言葉に美月ちゃんは驚愕に表情を変える。
私の言っている言葉が理解できないのだろうか?
いや、今回に限りはいくら美月ちゃんの頼みでも聞くつもりはないから、どっちでもいい。
「ホープっ!!ダメだって言ったじゃん!!今すぐやめて!!じゃないと絶交!!」
いつもなら狼狽するだろう美月ちゃんの言葉にも私は落ち着いていた。
そう。
私は慢心していたのだ。
はじめから全力で叩き潰せばそもそもこんなことにならなかった。
絶交?
上等だよ。
これは油断した私への罰だ。
「…絶交で美月ちゃんを守れるなら私としては本望だよ…マリアに思い知らせてやる…なりふり構わず突っ込んできて刺し違えるつもりだろうけど、ここからは私も正真正銘の本気だよ…マリア…お前ごときじゃ逆立ちしても私の足元にも及ばないことを思い知らせてやる…」
「ホープ…」
美月は呟いた。