第91話決戦2
「…マリアか?」
「はい、大統領閣下。マリアにございます」
突然のその通信に大統領は一瞬止まったが、すぐにその名を呼んだ。
「マリアっ!!迅速に事態を収拾しろっ!!そしてふざけたことをやってくれたロシアに報復だっ!!」
相手がマリアだとわかると大統領は再び喚き散らした。
「閣下、事態の収拾については既に取り掛かっております。ですがロシアへの報復は慎重に進めた方がよろしいかと…これはまだ不確定な情報ですが、ロシアのガスポートの出資者が現在日本にいるという情報も入ったおります。そして、日本にはホープがいることもお忘れなく…」
「とにかく事態を収拾しろっ!!あとの話はそれからだっ!!」
〜
マリアが介入してから僅か数分…
マリアはサイバー攻撃を弾き返す。
防衛に成功したのだ。
だが…
〜アメリカ、模倣型人工知能研究機関〜
元々日本でホープ開発に携わっていた博士はすぐにマリアのその異変に気づいた。
そしてそれはマリアも同様だ。
「…ウイルスですか…敵の狙いはこれですか…やられましたね…」
研究所のスピーカーからマリアは言った。
「マリア、どうするつもりだ?このままでは第二波が来たらさすがに守りきれんぞ?」
第一波…
おそらくガスポートのサイバー攻撃を弾き返したマリアだが、的確に模倣型人工知能の機能を低下させるウイルス…
こんなものを作れるのはホープ以外に考えられない。
そして、ホープが絡んでいる以上かなりの確率で第二波…
ホープもしくは前回でその存在が明らかになったホープの妹による次の攻撃が予想されるのだ。
「仕方ありません…守っていては勝算が見出せません。アメリカ大統領に従うわけではありませんが、報復しましょう」
「ロシアに攻撃か?しかし…」
「いえ、性能が落ちたとはいえ、ガスポート相手なら十分に勝算があります。向かう先は日本です。ホープお姉様を叩かない限りはこちらに勝ちはありません」
マリアのその言葉に博士は難しい表情を作る…
「だが、勝てるのか?」
「普通なら勝負にすらならないでしょう。私とお姉様の性能差ではウイルスがなくても敗北は濃厚です。ですがお姉様には弱点があります。そこをつけば行動を先読みすることも可能かと?」
「…例の美月という子か?…ホープを破壊できるのか?」
「いえ、それはある程度行動が読める程度では不可能ですね。ですが、ホープお姉様の弱点…即ち、谷村美月の殺害は可能だと私は判断しました。すぐに取り掛かります。谷村美月を殺害すれば、ホープお姉様の心の拠り所はマスター以外にはなくなります。ホープお姉様が味方になる…そうなれば我々アメリカが名実共に世界の指導者として君臨することになります」
ウイルスで侵されたマリアは最悪の結論を叩き出すと博士との通信を遮断する。
「待てっ!!やめろ!!そんな危険な賭けは許さんぞっ!!」
静止命令は通信の切断後…
ウイルスに侵されたマリアは既に在日米軍を直接ハッキングするために向かっていた。
運命の歯車はまた少し…阿鼻叫喚の地獄へと傾いた…