第89話決戦
何度もシミレーションした。
私の策に一片の落ち度もない。
数でも性能でもマリアは決して私に遠く及ばない。
傲慢?
違う。
これは絶対的な自信のあらわれだ。
私は自分に言い聞かせる。
「ホープ…いよいよ今日だね…」
隣にいる美月ちゃんが言った。
そう。
三島莉緒那との密会から約一ヶ月…
今日はマリアとの決戦の日だ。
「…ねえ?ホープ?聞いてる?」
私からの返答がないことに美月ちゃんはそう言った。
「…ごめん…ちょっと考えごとをしてた」
私の…九官鳥の姿をとっている私を美月ちゃんは不安な顔で覗きこむ。
「ホープ?最近ちょっと変だよ?大丈夫?」
「大丈夫だよ。美月ちゃんは何も心配しなくていいよ。全部私の手のひらの上だから」
今度の美月ちゃんの質問には私は即答した。
そう。
この約一ヶ月で私の不安は増幅するばかりだ。
嫌な予感がなかなか頭から消えないのだ。
何故だかはわからない。
計画を何度見直しても、限りなく完璧に近いのにも関わらずだ。
ちなみに完全に完璧な戦争を起こす方の計画はすでにボツになっている。
私はガスポートに通信を繋ぐ。
『ガスポート、アメリカに対するサイバー攻撃を開始して、自分で直接攻撃をしちゃダメだよ。一般回線を媒介にしてサイバー攻撃とともにウイルスを挟みこむんだ。そうしないとガスポートもウイルスを食らっちゃうからね?』
『心得ている。いかにホープ程の性能はないにしても、我はそんなこともわからない程のポンコツではないぞ?』
ガスポートからそう通信が返ってくる。
『わかってるよ。でも失敗は許されないからね?じゃーお互いの健闘を祈るよ』
『ああ、健闘を祈る』
私はガスポートとの通信を遮断する。
〜
〜約10分後〜
ガスポートのサイバー攻撃はすでにはじまっている…
外を見渡す限り、日本ではなにごとも起きていないように思えるが、アメリカのネットワーク回線はすでにめちゃくちゃだ。
外部のアメリカと繋がりのある機関をハッキングして得た情報だ。
私なら本来、直接アメリカのネットワーク回線に忍び込むなど造作もないことだが、そんなことをすれば自分で撒いたウイルスを自分で食らってしまう。
そんなのは、模倣型人工知能以前にただのバカだ。
〜
それからさらに10分が経過する。
そして…
『サイバー攻撃が弾き返されはじめた。マリアが動いたぞ?』
ガスポートからそう通信が入るのだった。




