第8話友達4
「ゴホッゴホッゴホッ…」
私は盛大に咳き込む。
「ははっ、まあ最初はそんなもんだよ?そのうち慣れる」
「は…はい」
「おい、敬語なんか堅苦しい真似すんなよ?今日から仲間なんだろ?」
「…うん八神さん」
もはや断れない雰囲気だ。
全部ホープのせいだ。
「八神さんって呼び方も気色わりーからやめろ。華音でいい。あ、名前にさんなんか付けるんじゃねーぞ?ウチらタメだろ?」
「……わかった…華音…」
「それでいい」
言いながら八神さん…いや、華音は何故か単管小屋に5つもあるクーラーボックスをゴソゴソと漁る。
「クソ…マジでなんもねーな。ほとんど空じゃねーかよ…あ、これなら飲めるか。酒じゃねー方がいいだろ?」
華音はファン◯グレープを見つけて私に渡す。
その後は帰れない雰囲気になり、何故か華音とダーツがはじまっていた。
ちなみに華音は普通に上手かった。
そして四限目が始まる頃…
「…華音さんおはようございます…誰ですか?その子…」
屋上に入ってきた人物がいた。
金髪にピンクのスウェット…
若干寝癖が付いているノーメイク…
顔立ちは綺麗だが、かなりズボラな性格が垣間見える。
その子は眠そうな目を擦りながら言った。
「莉奈。てめえ化粧ぐらいしてこいや?てか起きるの遅すぎだろ?」
「無理ですよ…あたしは夜型ですし…てかその子は誰ですか?」
「新しいウチの連れだ。朝っぱらにボロ負けしちまった。一応ウチと同じクラスだぞ?」
華音のその言葉に莉奈と呼ばれた女は、先程までの眠そうな目とは打って変わってまん丸に目を見開く。
「女子で華音さんに勝つとかその子人間ですか?てか先輩なんですね?あたしは1年の一条莉奈って言います。えっとー…」
「美月だ」
「美月先輩これからよろしくお願いします」
「あー…うん…」
思い出した。
一年にいるヤバイ子の話を…
その子は学校に枕を常備していて、昼間は基本的に寝ている。
とんでもなく寝起きが悪く、ひとたび起こそうものならブチギレて起こした相手を携帯している短い鉄パイプで滅多打ちにするらしい…
そしてついたあだ名は吸血姫…
クラスで空気と化していた私の耳にそんな話が伝わったのは近くの席の子が休み時間に話していたからだ。
結局その後は続々と現れる学校のヤンキー達に囲まれて私の1日は終わった。
『友達いっぱいできてよかったね?』
ふざけんな…
私はスマホに表示されるホープの文章に思ったのだった。