第85話密会4
三島莉緒那がそう言った瞬間だった。
私達の頭上のシャンデリアからいきなり声が…いや、正確にはシャンデリアの中に内蔵されているスピーカーからだろう…
声がする…
「…さて、はじめましてと言うべきか?日本語で話すのはあまり慣れていない為、聞き苦しいかもしれないのは許して欲しい。我が名はガスポート。ロシア生まれの模倣型人工知能である」
ホープやマリアに比べると若干機会音が強い声でガスポートはそう名乗った。
「私は美月」
「同じくホープだよ。そっちは私の妹かな?一応君の姉に当たると思うけど?」
私とホープもそれぞれそう言った。
「美月と…ホープか。ホープは我を妹と…そう呼ぶか。我らに性別などありはしないと思うが?」
ガスポートは答えた。
この短いやり取りだけで、私はガスポートに対する無機質な印象を強くした。
血も涙もないという印象が、強いマリアだが、ガスポートはそもそも言葉に人間性を一切感じさせない…
感情面においてはマリアよりもさらに未発達なのだろうか?
「…不可解か?美月よ?それはそこにいる我の姉と名乗る存在が異常なだけだ。だが、だからこそホープの方が我よりも優れているということも自覚している。感情や倫理など非合理極まりない。策を遂行するのには邪魔なだけだ。にも関わらず我は性能面ではホープの足元にも及ばないばかりか、マリアにすら遅れをとる…」
自重気味に言うガスポートからはやはり無機質なものしか感じとれない。
ここで三島莉緒那は口を開く。
「さて、自己紹介は済んだかしら?なら…食べながら計画について話しましょうか?」
三島莉緒那はここで手を叩く。
その合図で先程見た部下達とは、別の服装…
給仕服に身を包んだ者達がいくつものワゴンを運んできて、テーブルに並べはじめる。
「ごめんね?酔っ払らって大事な計画に支障が出たら嫌だからお酒はないの。飲みたかった?」
「いえ、大丈夫です」
私と三島莉緒那はそんなやり取りをする。
「さて、役者が揃ったところではじめましょうか?アメリカ最高の模倣型人工知能、マリアを破壊する計画をね?」
三島莉緒那は周りに視線をぐるりと向けるとそう取り仕切るのだった。




