第83話密会2
その後僅か数十秒で真っ白な高級車が私達の前に停まる…
えと…
あれはベンツじゃなくて…
『BMWだね』
そう。
それだ。
車に詳しくはない私にホープが教えてくれる。
てか何かしたように見えなかったけど、三島莉緒那はどうやって車を呼んだの?
私は素朴な疑問をホープに投げかける…
『よく見てみなよ?三島莉緒那の左手を…常にポケットに突っ込みっぱなしだよ。三島莉緒那はあれでモールス信号で部下に指示を飛ばしてるんだよ。まあ、車が到着するのがかなり早いから私達の答えははじめから予想していたんだろうけどね』
ホープは言った。
その時だ。
運転席から降りてきた男が後部座席の扉を開ける。
「澪さん、谷村さん、どうぞ。私がお送りいたします」
なんでこの人は部下にも本名を名乗ってないんだろう?
私は思った。
三島莉緒那はそんな私の心を読んだわけではないのだろうが、澪さんという三島莉緒那の言葉に私が反応したのを察したのだろう。
「…本当の名前は経歴がズタボロで使い物にならないのよ…。主にクソ兄貴のせいでね?自分でミスったことなんか一度もないのに、いつもアイツのせいでめちゃくちゃにされるのよ。バカならバカなりに大人しくしとけばいいのに、アイツはいつもでしゃばりやがって…」
私にだけ聞こえるように小声で言った三島莉緒那の後半の声は、怒りの為かワナワナと震えていた。
うん…これ以上突っ込まないでこの話題は終わりにした方がよさそうだ。
私は三島莉緒那の後に続き、黙って車に乗り込む…
〜
車は走り出す。
「ねえ?美月ちゃん?最近の中学生って何してるの?」
別荘に着くまでの間に三島莉緒那は私に世間話をふってくる。
「何って普通…いえ、何が普通なのかもうわかりませんが…」
「それもそうね?日本最大の広域暴力団の最高幹部が普通の中学生なわけないわね?あ、ごめん、嫌味じゃないわよ?」
若干不機嫌になった私の態度が顔に出ていたのか、三島莉緒那は最後にそう付け加えた。
「…逆にあなたはどんな子供時代だったんですか?」
どうせ着くまでの間だ。
私も三島莉緒那の世間話に乗っかる…
妖艶な雰囲気を持つ美女でありながら、腹の中は真っ黒なこの人の子供時代を私は想像もつかなかったからでもあるが…
「そうね…ウチは親が本当にどうしようもなくてね…あたし達は元々三兄弟でね?弟の鋭治はあたしが育てたわ。まあ、あの子はすぐに1人でも生きていけるように育ったけどね?うーん…あたしが美月ちゃんぐらいの頃かー…。美人局に援交の元締め、クソ兄貴の名前でレディースのケツモチや、アレは完全に失敗だったけど大麻草の栽培とかにも手を出したわね。あれがなければあたしの人生で捕まることなんかありえなかったのに…全部クソ兄貴のせいよ…」
また話がこっちの方向にきてしまった。
私はそれには触れずに口を閉ざすのだった。