第82話密会
深夜2時…
かけていたアラーム…
まあ、ホープが鳴らしたのだが、それによって私の意識は覚醒する。
私はベッドから立ち上がる…
「…どうやって行く?車?バイク?…」
支度をしている私に対し、ボリュームを落とした声でホープはそう聞いた。
寝ている母を起こすような真似をして心配をかけたくはない。
ホープもそんな私の気持ちをわかってくれているようだ。
「…いや…目立ちたくないから歩く…あの辺りは未亜の家からそんなに離れていないから、たぶん歩いても30分もかからないし…」
三島莉緒那とはじめて出会った…いや、襲撃を受けた場所はその程度の距離だ。
支度を終えた私は九官鳥ホープを肩に乗せて静かに家を出る。
〜
深夜の住宅街は閑散としている。
まるでわたし達以外誰もいないかの様な錯覚にみまわれる。
そんな中、ホープを肩に乗せた私は歩く…
そして私達は目的地にたどり着く…
〜
目的地にはすでに人影が二つ…
大男と女性のシルエットだ。
まあ、こんな目立つ存在が目的の人物でないことはさすがにないだろう。
私は声をかけようとするが、その前に女性…
つまりは三島莉緒那が口を開いた。
「さすがは美月ちゃん、早かったわね。10分前行動なんてどこかの時間にルーズなクソ兄貴にも見習ってほしいわ」
「…そういうあなたは随分と早いみたいですけど?」
「もちろんよ?大切なお客様を待たせるわけにはいかないしね?」
三島莉緒那は食えない態度でそう返した。
さて、ここからだ。
「話をする前にここじゃちょっとね…。近くに防音とセキュリティーに自信がある私の別荘があるんだけど、そこまでどうかしら?一応もてなしの準備はしているわよ?」
三島莉緒那の言うもてなしが暗殺部隊などではなく、純粋な意味でのものなのだろうが、簡単についていっていいものか…
「ごめん、美月ちゃん。ちょっと代わるよ」
私に一言そう断ってから九官鳥ホープは口を開く。
「結論から言うと、君の別荘に場所を移すことは構わない。私の準備は完璧だからね。この場…いや、半径50キロ以内で殺り合うなら私達の勝利は絶対だよ。従ってそちらの提案は飲むよ。…だからさっさと周りにいる316人の手下の誰かに車を持ってきてもらってよ?」
316人?
フロゲニとかいうロシア人以外にそんなにいるの?
私にはわからないんだけど?
だがホープのその言葉が正しいことは次の三島莉緒那の言葉で証明される。
「ふふっ、さすがね…あなた達のことを信用していないわけじゃないんだけど、用心深いのは性分でね?少し待ってて?今車を手配するわ」
三島莉緒那は言ったのだった。