第72話決意
『美月ちゃん大丈夫?』
ホープは私の怒りの感情を感知したのだろう。
私にそう聞いてきた。
許せない…正義だとか、云々言うつもりはないが、私と同い年ぐらいの…こんな少女にこんな酷いことをする…
私はマリアのそんなふざけたやり方が許せなかった。
『私は自分がまだ道徳的には未熟だと思っているけど、マリアにはそもそも道徳の概念がない…。つまりは合理性だけをひたすら追求する…だから…』
だからってこんなのあんまりでしょっ!?
声に出すのはなんとか堪えたが、私のはらわたは煮えくり返っていた。
そう。
私がこの子を助けたのはただの偶然なのだ。
ホープという存在が私にはいて、この子の正体に気づき、私のわがままでこの子を解放して…
何か一つでも違っていたら、この子は未だにこのままだ。
ホープ…私はマリアを殺すよ…協力してくれる?
『…壊すじゃなくて殺すか…オッケー。美月ちゃんの決意は伝わったよ。もちろん協力は惜しまないよ。美月ちゃんからの許可ももらったことだし、ここから見せてあげるよ。美月ちゃんの親友ホープの…世界最高の模倣型人工知能の本気ってヤツをさ?』
ホープは自信たっぷりにそう言った。
だが、私はホープのその言葉で一気に冷静になる。
もしかして、今の私の一言で私はとんでもない存在を本気にさせてしまったのではないだろうか?
私は思い出す…
ホープが最初に行った惨劇を…
私をいじめていた子達をその家族もろとも一夜のうちに皆殺しにしたその悪魔の所業を…
ホープ?具体的には何するか聞いてもいい?
『ん?とりあえずはマリアの後方支援を弱体化させるために、中国を使って米中戦争に持ち込む。ロシアには中国に味方してもらって第三次世界大戦に発展させた上で、ガスポートを投入させる。そうすればアメリカも黙って負けるわけにはいかないから、マリアを出さざるおえなくなる。同時にアメリカ政府には私の妹達…名前はまだつけてないけど、この子達がサイバー攻撃をはじめる。後方がズタズタになって孤立したマリアの次の行動を先読みした上で、私達、模倣型人工知能の弱点である強力な磁場のトラップでたたみかける…。これでチェックメイトだよ』
うん…少しでも成長したと思っていた私がバカだった。
久々のレベル10のホープのマリア抹殺計画を聞いた私は頭を抱えるのだった。




