第65話三島兄妹
部屋には現在、ホープと私と華音…さらには三島煌一と三島莉緒那の兄妹がいる。
私はチラリと華音に視線を送る…
普段は頼りがいのある華音もあまりの出来事にさすがに青ざめている…
そりゃそうだ。
こんなめちゃくちゃな経験をする中学生など、日本全国を探したところでいるわけがない。
「……すまん…美月…なんもできなかったわ…」
いや、この状況で何かできるのは人間ではない。
私自身当事者にも関わらず、ホープとあの化け物の災害ともいえる戦いの中、突っ立っていることしか出来なかった。
「気にしないで…」
私は言った。
もっと気の利いた言葉を言うべきなのかも知れないが、私も混乱しているのだ。
その時だ。
部屋に一人の人物が入ってくる。
「…日本人じゃねーな?だいぶ若いみてえだが、莉緒那の新しい護衛か?」
三島煌一は言った。
例の外国人の転校生だ。
いざという時…
幸い、化け物との肉弾戦という最悪の事態にはならなかったが、その万が一に備えてホープは部屋の前に待機させていたのだ。
「さあ?こんな子を雇った覚えはないけど?」
三島莉緒那はチラリと転校生の子を見てからそう答えた。
「……私の連れです」
ここで黙っていても仕方ないので私は口を開いた。
ちなみに一応休戦している今、私の口調は敬語である。
二人とも世間では悪名高い三島三兄弟みたいだが、それ以前に人生の遥か年長者である。
もっとも、私が経験してきた人生とこの人達が経験してきた人生はまるで違うし、私が知っている彼らと同い年ぐらいのお爺さんやお婆さんとは似ても似つかないが、それとこれとは話は別である。
「…てめえの手下か。まあいいや。別にいても問題はねえ」
「いえ、手下というわけでは…」
手下と言う三島煌一の言葉を否定しよう思ったが、言っている途中で私は別にそこは対して重要ではないということに気付く。
「なんでもいいが、長話は嫌いだ。さっさとはじめるぞ?莉緒那っ!!」
向こうもそこはどうでもよかったようだ。
三島煌一は妹である三島莉緒那に視線を向ける。
三島莉緒那はため息を吐く。
「はあ…ごめんなさいね?見ての通り、コイツは脳筋でね?先に言っておくわ?交渉をはじめる前にあたし達の立場は対等…ここまではいいわね?」
「おいっ!!莉緒那っ!!こんなガキと俺が…」
「そのガキ相手に敗走したあたしと、追い込んだはいいけど、この街といっしょに心中しかけたあんたが何言ってるの?まだ文句ある?」
「ちっ…」
舌打ちをして三島煌一は押し黙る。
「それでいいわよね?」
私は再度聞かれた三島莉緒那のその問いにコクリと頷くのだった。