第58話転校生5
「いやー、ママなんてガラじゃないから妹でいいんじゃないかな?それより二人ってよく気づいたね?」
「ハッキングの開始にほんのわずかですが、誤差がありましたから…それぞれの推定性能は多く見積もってもお姉様の半分と言ったところでしょうか?」
「まさか?二人共私の4割ぐらいだよ。共謀されて負けちゃったなんてのはさすがに笑えないしね?それに一年やそこらでそんなにいくつも作れるほど簡単なものでもないしね?二つが限界だったよ」
は?
作った?
模倣型人工知能を?
ホープが?
『うん、まだ名前は付けてないけど二人共いい子達だよ?今度いっしょに考えようね?』
「いや、ホープ一人でいろいろお腹いっぱいなんだけど…」
この発言は聞かれても構わないと判断した私は直接声に出してそう言った。
「さすがはお姉様です…もはや手段を選んでいる余裕は…いえ、なんでもありません。近いうちにまた会うことになるでしょう」
スピーカーから聞こえるマリアの声はそれを最後にパタリと止む。
〜
「さて、この子をどうするかだけど…」
九官鳥ホープは翼でマリアだったもの…転校生の少女を指しながら言った。
私は答える。
「どうするも何も自由にしてあげようよっ!?可哀想じゃん!!」
「いや…最終的にはその予定なんだけど、ここで自由にするといろいろと面倒くさいんだよね。解放は放課後あたりかな?それまでは私がこの子の体の主導権を握らせてもらうよ」
この子がいったいいつからマリアに支配されていのかわからない…
もしかしたら、マリアに支配されていた間は記憶がないのかも知れない…
そんな状況でこの子を解放すれば面倒なことになるのは確実だ。
できれば、そんな面倒な事態は学校ではない場所…できれば部外者のいない状況で解放するのがベストである。
〜
その後、私と転校生の子は教室に戻り普通に授業を受ける…
眠気なんかどこかに行ってしまった…
解放するのに適した場所…
華音なら知っているかな?
とりあえず昼休みに華音にだけは話しておいてもいいかも知れない。
私は完全に授業そっちのけでそんな事を考えるのであった。